ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#24】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第24回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

According to the textbook account, this question divides ancient and modern political thought. In one important respect, the textbook is right. Aristotle teaches that justice means giving people what they deserve. And in order to determine who deserves what, we have to determine what virtues are worthy of honor and reward. Aristotle maintains that we can't figure out what a just constitution is without first reflecting on the most desirable way of life. For him,law can't be neutral on the questions of the good life.

 

■単語と文法事項の確認

・account:話、報告書 

・deserve:○○する価値がある 

・determine:決定する 

・worthy of A:Aにふさわしい 

・honor:名誉 

・figure out:理解する 

・constitution:構成・組織 

・reflect:熟考する 

・desirable:望ましい 

 

■私訳

教科書的説明によると、この問いは古代と現代の政治思想に区別される。ひとつの重要な点として、教科書は正しい。アリストテレスは、正義とは価値あるものを人々に与えることを意味する、と教えている。誰に何が価値があるかを決定するために、何の徳が名誉で報酬があるかをわれわれは決定しなければならない。アリストテレスは、適切な制度とは何かということは最も望ましい生き方についてまず始めに熟考することなしには理解できないと主張する。彼にとって、よい生き方の問題に関して法は中立ではあり得ない。 

 

■本書の訳

教科書的な説明では、この問い[にどう答えるか]によって古代と近現代の政治思想が分かれることになる。1つの重要な点で、教科書は正しい。アリストテレスは、正義とは人々にふさわしいものを与えることだと教えている。さて、誰に何がふさわしいかを決めるには、どんな美徳が栄誉や報奨に値するかを決めなければならない。アリストテレスは、どういう政治制度が正しいのかを理解するためには、まず、最も望ましい生き方とは何かを考えてみなければならないと主張する。アリストテレスにとって、法律は、良い人生とは何かという問題に対して中立ではありえないのだ。(p.28)

 

■私訳と本書の訳の比較

 冒頭に登場する「この問い」とは、美徳への態度の取り方の問題である。まずアリストテレスの考えを、サンデルは検討する。

 

 アリストテレスによれば、政治制度の正しさを理解する前に「最も望ましい生き方」(the most desirable way of life)について考えなければならない。「良い人生とは何か」(the questions of the good life)という問題に、法律は中立ではあり得ない。【続く】

 

 

【参考文献】

 

 

【私訳#23】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第23回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

This dilemma points to one of the great questions of political philosophy: Does a just society seek to promote the virtue of its citizens? Or should law be neutral toward competing conceptions of virtue, so that citizens can be free to choose for themselves the best way to live?

 

■私訳

このジレンマは政治哲学の大きな問いのひとつを指し示す。すなわち、公平な社会は市民の徳を促進しようとするのか。あるいは法は競合する徳の概念に中立的であるべきなのか。それで、市民は自分たちで最善の生き方を自由に選択できるようにすべきなのか。 

 

■本書の訳

このジレンマに政治哲学の重要問題の1つが現れている。正しい社会とは市民の美徳を養おうとするものだろうか。それとも、法は、美徳に関する競合する考え方については中立を守り、何が最善の生き方なのかは市民が自分で選択できるようにするべきなのだろうか。 (p.27)

 

■私訳と本書の訳の比較

 この段落で、サンデルは2つの問題を提起する。

 

①正しい社会は市民の美徳を養おうとするものなのか

②美徳に関する考え方について、社会は中立を守るべきなのか

 

 本書の解説によれば、アリストテレスらの古代哲学者は①の立場を採る。一方、カントやロールズらの近現代の哲学者らは②の立場を採る。

 

 しかしサンデルの考えでは、どちらの立場に立てるほど問題は単純ではない。引き続き次の段落を読み進める。【続く】

 

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 

【参考文献】

 

 

 

【私訳#22】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第22回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

 So when we probe our reactions to price gouging, we find ourselves pulled in two directions; we are outraged when people get things they don't deserve; greed that preys on human misery, we think, should be punished,not rewarded. And yet we worry when judgments about virtue find their way into law. 

 

■単語と文法事項の確認

・probe:探る 

・pulle:引っ張る 

・outraged:憤慨させる 

・deserve:価値がある 

・preys:傷つける 

 

■私訳

それでわれわれが法外値上げへの反応を探るとき、われわれは2つの方向性に引っ張られる。すなわち価値がないものを手に入れるとき、われわれは憤慨する。われわれが考えるように、人の不幸を食い物にする強欲は罰せられるべきで、報酬を与えるべきではない。そして美徳についての判断が法の中にその方法を見つけるとき、われわれは心配にもなる。 

 

■本書の訳

便乗値上げに対するわれわれの反応を探ってみると、自分が2つの方向に引っ張られていることがわかる。その人にふさわしくないものを手に入れている人がいれば、われわれは憤りを感じる。他人の窮状を食い物にする強欲は罰せられるべきで、報奨を与えられるべきではない、とわれわれは考える。それでもやはり、美徳に関する判断が法律に入り込むと、われわれは心配にもなるのだ。 (p.26)

 

■私訳と本書の訳の比較

 ここでいう「2つの方向に引っ張られ」(pulled in two directions)るとは、道徳と法の葛藤であると考えられる。

 

 「憤りを感じ」(outraged)たり、「強欲は罰せられるべき」(should be punished)であると考えることは、道徳的感情や判断から生じるものである。一方で、「美徳に関する判断」(judgments about virtue)に法律が入り込むと、われわれは心配にもなる。

 

 この点に、道徳と法の葛藤をサンデルは見出している。【続く】

 

【参考文献】

 

 

【私訳#21】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第21回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

The virtue argument, by contrast, rests on a judgment that greed is a vice that the state should discourage. But who is to judge what is virtue and what is vice? Don't citizens of pluralist societies disagree about such things? And isn't it dangerous to impose judgments about virtue through law? In the face of these worries, many people hold that government should be neutral on matters of virtue and vice; it should not try to cultivate good attitude or discourage but ones. 

 

■単語と文法事項の確認

・by contrast:対照的に 

・rest on A:Aに依存する 

・greed:強欲 

・discourage:妨げる 

・impose:課す 

・cultivate:育成する 

 

■私訳

対照的に、美徳論は、強欲は州が妨げるべき悪徳であるという判断に依存する。しかし何が美徳かそして何が悪徳かを誰が判断すべきか。多元的社会の市民がそのようなことについて支持しないのか。そして美徳についての判断を法を通して課すのは危険ではないだろうか。そのような心配に直面して、政府は美徳と悪徳の問題について中立的でなければならないと多くの人々は考える。すなわち、よい態度やそうでないことを妨ようとすべきではない、ということである。

 

■本書の訳

これに対し、美徳論は、強欲は州が押さえ込むべき悪徳だという判断に基づいている。だが、なにが美徳で何が悪徳顔誰が判断すべきなのだろうか。多元的な社会の市民の意見は、そうしたことについては一致しないのではないだろうか。それに、美徳に関する判断を法律によって押し付けるのは危険ではないだろうか。こういう懸念があるため、美徳と悪徳の問題について政府は中立であるべきだと多くの人々は考える。政府というものは、良い心構えをはぐくもうとか、悪い心構えを改めさせようなどと企てるべきではない、というわけだ。 (p.26)

 

■私訳と本書の訳の比較

 「美徳論」(the virtue argument)に立てば、「強欲は州が押さえ込むべき悪徳」(greed is a vice that the state should discourage)であると判断され得る。一方、「多元的な社会の市民」(citizens of pluralist societies)の中では、このような意見は支持できない。

 

 本書は、この問題を美徳論の「ジレンマ」と呼ぶ。このジレンマに政治哲学の重要問題が現れている、とサンデルは指摘する。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 

【参考文献】

 

 

 

【私訳#20】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第20回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Some people, including many who support price-gouging lows, finds the virtue argument discomfiting. The reason:It seems more judgmental than arguments that appeal to welfare and freedom. To ask whether a policy will speed economic recovery or spure economic growth does not involve judging people's preference.It assumes that everyone prefers more income rather than less, and it doesn't pass judgment on how they spend their money. Similarly, to ask whether, under conditions of duress, people are actually free to choose doesn't require evaluating there choices. The question is whether,or to what extent, people are free rather than coerced. 

 

■単語と文法事項の確認

・discomfit:当惑する 

・judgmental:独善的に早急に判断する 

・policy:政策 

・speed:加速する 

・spure:駆り立てる 

・preference:選好 

・pass:下す 

・duress:脅迫 

・evaluate:評価する 

・coerce:強要する 

 

■私訳

法外値上げ法を支持する人も含め、美徳論に当惑する人も見つける。理由として、幸福や自由に訴える議論よりも早急に判断するように思われるからである。ある政策が経済復興を加速させたり経済成長を駆り立てるかどうかを問うことは、人々の選好判断を含まない。誰もが少ない収入よりも多い収入を選好すると仮定するし、お金をどう使うかについての判断も下さない。同様に、強要された状況下で、人々が実際自由に選択できるかどうかを問うことは、その選択を評価することを必要としない。問題は、人々が強要されるよりも自由であるかどうか、もしくはどの程度自由であるかである。 

 

■本書の訳

美徳論にとまどう人もいる。便乗値上げ禁止法支持者にもそういう人は多い。美徳論は、幸福と自由に訴える議論よりも、分別を押しつけるところがあると思われるからだ。ある政策によって経済復興が早まるか、経済成長が促されるかを問うとき、人々の選好に関する判断は含まれない。そこでは、誰もが少ない収入よりも多い収入を選好すると仮定されており、人々のお金の使いかた[の是非]に関して判断を下されない。これと同時に、追い詰められた人々が本当に自由に選択できるかどうかを問うとき、彼らの選択[の是非]を評価する必要はない。問題は、人々が強いられず自由であるかどうか、あるいはどの程度自由なのかである。 (p.25)

 

■私訳と本書の訳の比較

「美徳論」(the virtue argument )には、「分別を押しつける」(judgmental)ところがある。「便乗値上げ禁止法支持者」(who support price-gouging lows)の中にも、「美徳論」を支持しない人もいる。

 

 自然災害などの緊急事態の中で「追い詰められた人々」の自由の是非を、われわれは「評価」(evaluate)できない。ここでのポイントは、人々が強制されず「自由」(free)であるかどうか、または「どの程度」( what extent)「自由」なのかである。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】

 

 

 

【私訳#19】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第19回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

To acknowledge the moral force of the virtue arguments is not to insist that it must always prevail over competing considerations. You might conclude, in some instances, that a hurricane-stricken community should make a devil's bargain – allow price gouging in hopes of attracting an army of roofers and contractors from far and wide, even at the moral cost of sanctioning greed. Repair the roofs now and the social fabric later. What's important to notice, however, is that the debate about price-gauging laws is not simply about welfare and freedom. It is also about virtue - about cultivating the attitude and dispositions, the qualities of character, on which a good society depends. 

 

■単語と文法事項の確認

・acknowledge:認めること 

・insist:要求する 

・prevail:優先する 

・considerations:問題点 

・conclude:結論を下す

・in some instances:例えば 

・bargain:契約 

・in hopes of A:Aに期待して 

・attract:引きつける 

・an army of A:大勢のA 

・contractor:建設業者 

・sanction:是認する 

・greed:貪欲 

・fabric:構造 

・notice:注意 

・cultivate:陶冶する 

・disposition:気質 

・quality:質 

 

■私訳

美徳論の道徳的な力を認めることは、それが競合する問題点に対していつも優先することを要求するわけではない。例えば、ハリケーン被害に遭った共同体はー強欲さを是認する道徳的コストでさえ、広く遠くから大勢の屋根職人や建設業者を引きつけることを期待して価格の値上げを許容するというー悪魔の契約をするべきであると決断を下すかもしれない。今は屋根を直し社会構造は後である。しかしながら、注意すべき重要なことは、法外な値上げ法についての議論は単に幸福で自由に関することではないということである。それは美徳、すなわちよい社会に依存した気質、つまり性格の質や態度を陶冶することに関わる。 

 

■本書の訳

美徳論が道徳に及ぼす力を認めると言っても、それが競合する議論に対してつねに優先されねばならないと言っているのではない。たとえば、ハリケーンに襲われたコミュニティは悪魔の取引を結ぶべきだという判断が下される場合もあるだろうー強欲を受容する道徳面とコストを支払ってでも、広く各地から屋根職人や建設業者が押し寄せるのを期待して、便乗値上げを受け入れるべきだという判断だ。まずは屋根の修理をやってしまって、社会機構はその後の話だ。とはいえ、押さえておくべき大切なことは、便乗値上げ禁止法をめぐる議論は単に幸福と自由に関わるわけではないという点だ。それは美徳についてのー心構えや気質、つまり性格を陶冶することについてのー議論でもある。よい社会は美徳を土台としているのだ。 (p.24)

 

■私訳と本書の訳の比較

【私訳#11】で確認したように、「便乗値上げ禁止法」(price-gauging laws)の議論は、①幸福の最大化②自由の尊重③美徳の促進を中心に展開される。

 

【参考:過去記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 「美徳論」(the virtue arguments)は、常に優先されるとは限らない。しかし、「便乗値上げ禁止法」をめぐる議論は単に上記の①と②だけではない、とサンデルは主張する。今回は美徳に関する議論でもある。【続く】

 

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 

【参考文献】

 

 

【私訳#18】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第18回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Greed is vice, a bad way of being, especially when it makes people oblivious to the suffering of others. More than a personal vice, it is at odds with 
civic virtue. In time of trouble, a good to society pulls together. Rather than press for maximum advantage, people look out for one another. A society in which people exploit their neighbors or financial gain in times of crisis is not a good society. Excessive greed is therefore a vice that a good society should discourage if it can. Price-gouging low cannot banish greed, but they can at least restrain its most brazen expression, and signal society's disapproval of it. By parnishing greedy behavior rather than rewarding it, society affirms the civic virtue of shared sacrifice for the common good.  

 

■単語と文法事項の確認

・oblivious:気にかけない 

・is at odds with A:Aに反する 

・pull together:協力する 

・press:重圧 

・look out for:気を配る 

・exploit:利用する 

・financial:金融上の 

・excessive:度を超した 

・discourage:妨げる 

・banish:追放する 

・restrain:抑制する 

・brazen:恥知らずの 

・signal:証拠となる 

・disapproval:不賛成 

・reward:報いる 

・affirm:支持する 

 

■私訳

苦しんでいる人を気にかけないとき、強欲は悪徳、すなわち悪いあり方になる。個人の悪徳以上に、それは公共の徳に反する。困難の時期に、よい社会は協力する。利益の最大化の圧力以上に、人々は他人に気を配る。危機的な時期に隣人や金融上の利益を人々が利用する社会はよい社会ではない。それで強欲は可能であればよい社会が妨げるべき悪徳である。便乗値上げ法は強欲を追放できないが、少なくとももっとも恥知らずの発想を抑制することになるし、そしてその社会の不承認の証拠となり得る。褒賞するより強欲な振舞を罰することによって、社会が共通善の共有された犠牲の市民的徳を支持することになる。

 

■本書の訳

強欲は悪徳、つまり悪しき生き方である。そのせいで他人の苦しみが目に入らなくなる場合は特にそうだ。強欲は一身上の悪徳にとどまらない。それは公徳に反するのだ。良い社会は困難な時期に団結するものだ。人々は利益を最大化するのではなく、たがいに気を配りあう。危機に際して人々が隣人を食い物にして金儲けするような社会は良い社会とは言えない。したがって、行き過ぎた強欲は、可能ならば社会が押さえ込むべき悪徳なのだ。便乗値上げ禁止法によって強欲を消し去ることはできないが、臆面もない強欲行為は少なくとも防ぐことができるし、社会がそれを是認していないことは示せる。強欲なふるまいに報奨でなく罰を与えることで、社会は、公益のために犠牲を分かち合う公徳を支持することになるのだ。 (p.23)

 

■私訳と本書の訳の比較

「強欲」(greed)は「公徳」(civic virtue)にも反する。「行き過ぎた強欲」(civic virtue)は「社会が抑え込むべき悪徳」(a vice that a good society should discourage)である。この根拠を基に、「強欲なふるまい」(greedy behavior)に社会は「罰を与えること」(parnishing)を支持できる。

 

 しかし、この議論は暴論かもしれない。次の段落でサンデルは、どう展開するのか。気になりながら読み進める。【続く】

 

【次の記事】

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【参考文献】

 

 

【私訳#17】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第17回である。

 

【前回の記事】

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 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Christ touched on the moral source of the outrage when he described the "greed that someone must have in their soul to be willing to take advantage of someone suffering in the wake of a hurricane". He did not explicitly connect this observation to price-gouging laws. But implicit in his comment is something like the following argument, which might be called the virtue argument: 

 

■単語と文法事項の確認

・greed:欲張り 

・take advantage:利用する 

・in the wake of A:Aのすぐ後で 

・explicitly:明らかに 

・observation:意見・見解 

・implicit:含まれた 

 

■私訳

「ある人物がハリケーンのすぐ後で被った人を利用しようとする気持ちを持つ」欲深さを説明するとき、クリストは憤りという道徳の源泉について触れた。彼は法外な値上げ法へのこの見解に明らかに結びつけているわけではない。しかし次のような議論は彼のコメントの中で暗に含まれていて、それは美徳論と呼ばれるものであろう。 

 

■本書の訳

クリストが「ハリケーンの後で困ってる人を利用しても構わないと思える輩の内なる欲深さには呆れ返るばかりだ」と述べたとき、彼はこうした憤りの道徳的源泉を論じていたのだ。クリストは自分の所見を便乗値上げ禁止法にはっきりと結びつけたわけではない。だが、彼のコメントには、美徳論と呼んでいいような議論が暗に含まれている。それは次のようなものである。 (p.22)

 

■私訳と本書の訳の比較

 「憤りの道徳的源泉」(the moral source of the outrage)は、理性的な怒りであることが【私訳#16】から理解できる。それは、「美徳論」( the virtue argument)と考えてもよい。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】

 

 

 

【私訳#16】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第16回である。

 

【前回の記事】

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 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

But the outrage at price-gougers is more than mindless anger. It gestures at a moral argument worth taking seriously. Outrage is a special kind of anger you feel when you believe that people are getting things they don't deserve. Outrage of this kind is anger at injustice.

 

■単語と文法事項の確認

・mindless:思慮に欠ける 

・gesture:身振りで示す 

・deserve:値する

 

■私訳

しかし法外な値上げへの憤りは思慮に欠ける怒り以上のものである。それは真剣に行うに値する道徳的議論である。人々が値しないものを得ていると思っているとき、憤りは一種の特別な怒りである。この種の憤りは不正義の怒りである。 

 

■本書の訳

とはいえ、便乗値上げに対する憤りは考えなしの怒りにとどまらない。そこには、真剣な検討に値する道徳的議論が現れている。憤りとは特別な種類の怒りであり、誰かが何かを不当に手にしていると思うときに生じる。この種の憤りは不正義に対する怒りなのだ。(p.20ーpp.21)

 

■私訳と本書の訳の比較

 直訳を意識すると、ぎこちない文章になってしまう。本書は、サンデルの意図を汲み取った訳であることを改めて感じた。

 

 さて、サンデルは「憤り」(outrage)を「不正義に対する怒り」(anger at injustice)と定義している。この感情は、理性から来る感情と理解していいのだろう。【続く】

 

【次の記事】

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【参考文献】

 

 

【私訳#15】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第15回である。

 

【前回の記事】

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 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

 But we also need to consider one further argument. Much public support for price-gouging laws comes from something more visceral than welfare or freedom. People are outraged at "vultures" who prey on the desperation of others and want them punished-not rewarded with windfall profits. Such sentiments are often dismissed as atavistic emotions that should not interfere with public policy or laws. As Jacobi writes "demonizing vendors won't speed Florida's recovery. 

 

■単語と文法事項の確認

・public:市民 

・visceral:直観的な 

・outraged:憤慨させる 

・vultures:ハゲタカ 

・desperation:自暴自棄 

・punish:罰する 

・rewarded:報い 

・windfall:棚ぼた 

・dismiss:片付ける 

・demonize:悪者扱いする 

・vendor:物売り 

 

■私訳

しかし更に進んだある議論を考える必要がある。多くの市民が法外値上げ法を支持することは幸福や自由をより直観的ものに由来する。人々は他人のイラつきを祈ったり棚ぼたの利益ではない罰を欲したりする。そのような感情は社会政策や法に干渉すべきではないという原始的な感情として片付けられることが多い。ジャコビーが述べるように、「悪者扱いされた売り手によってフロリダの復興が早まるわけではない。」 

 

■本書の訳

だが、さらにもう1つ考慮すべき(禁止法擁護論の)理屈がある。多くの一般市民を便乗値上げ禁止法支持に導くのは、幸福や自由より直観的な何かである。人々は他人の窮状を食い物にする「ハゲタカ」に憤慨し、ハゲタカに棚ぼたの利益ではなく、罰を与えたいと欲する。こうした心情は、社会政策を法律に反映すべきではない現実的な感情として片付けられることが多い。ジャコビーが述べるように、「売り手を悪者扱いにしてもフロリダの不幸が早まるわけじゃない」ということだ。 (p.20)

 

■私訳と本書の訳の比較

「便乗値上げ法」(price-gouging laws)を本段落では、「ハゲタカ」(vulutures)と表現している。「便乗値上げ法」は「他人の窮状を食い物にする」法律である。「便乗値上げ法」への心情は、「原始的な感情」(atavistic emotions)である。そういう感情を抱いたとしても、フロリダの復興が早まるわけではない。【続く】

 

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【参考文献】