ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

道徳

【カント道徳哲学】道徳形而上学の基礎づけ|道徳の最高原理の探求とその確立

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 発売日: 2004/04/09 メディア: 単行本 カーネギーの著書『人を動かす』には、「人の立場に身を置く」や「笑顔を忘れない」など様々な原則が、書かれている。この原則が、世界中の人々の心を打ち、『…

【動物倫理学】高等学校教科書『倫理』| 人間と人間以外の動物の区別はあいまい

高等学校 改訂版 倫理 [平成29年度改訂] 文部科学省検定済教科書 [倫理310] 作者:第一学習社 メディア: テキスト 人間とは、何か。 高等学校教科書『倫理』は、この問いから始まる。 ソクラテスやカントなど様々な哲学者の思想から学ぶ前にひとつの手がかり…

【第7回】道徳教育での「主体的・対話的で深い学び」についての一考察-カント道徳教育を中心に-|終わりに【教育倫理学】

5.終わりに 以上、平成30年度告示『高等学校学習指導要領』とカント道徳教育から、「主体的・対話的で深い学び」について検討してきた。 インターネットによって、新時代の到来が社会や生活を大きく変えていく。その中で、教育活動全体を通じて「人間として…

【第6回】道徳教育での「主体的・対話的で深い学び」についての一考察-カント道徳教育を中心に-|『啓蒙とは何か』での理性の公的な利用(その2)【教育倫理学】

6.『啓蒙とは何か』での理性の公的な利用(その2) 【参考:過去記事】 chine-mori.hatenablog.jp 【前回の続き】 このカントの主張から平成30年度告示『高等学校学習指導要領』に記載されている「主体的・対話的で深い学びの実現」(文部科学省,2018,19)が、…

【第4回】人間以外の動物への倫理的配慮の基準は「苦痛」だけでは不十分である|まとめ【動物倫理学】

【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 4.まとめ 以上、今回はピーター・シンガーとベンサムの「功利主義」を中心に、人間以外の動物への倫理的配慮の基準となる「苦痛」についての主張を整理した。 その後、久保田さゆりの主張を参考にしながら、「苦痛」…

【第3回】人間以外の動物への倫理的配慮の基準は「苦痛」だけでは不十分である|久保田さゆりの議論【動物倫理学】

【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 3.動物の「豊かな内面」への理解ー久保田さゆりの議論 久保田さゆりもピーター・シンガーの考え方にも、基本的には賛成である。その理由として、久保田は次の2点を挙げている。 第1に、痛みはその倫理的な重要性の否…

【第2回】人間以外の動物への倫理的配慮の基準は「苦痛」だけでは不十分である|シンガーの議論【動物倫理学】

【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 2.「苦痛」という感覚が唯一の判断基準ーピーター・シンガーの議論 シンガーは、その著書『動物の解放』で次のように述べる。 もしある当事者が苦しむならば、その苦しみを考慮に入れることを拒否することは、道徳的に正…

【第1回】人間以外の動物への倫理的配慮の基準は「苦痛」だけでは不十分である|動物への倫理的配慮基準の新たな視点【動物倫理学】

動物の解放 改訂版 作者:ピーター シンガー 人文書院 Amazon 1.人間以外の動物への倫理的配慮基準の新たな視点 沖縄県では、「一生うちの子プロジェクト」という取り組みを実施している。この取り組みの目標は、県内での捨て犬や捨て猫をゼロにすることであ…

【カント道徳哲学】カント「不完全義務」の誤解の原因|2つの事例

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon カントの「不完全義務」という考え方は、応用倫理学の中で取り上げられる。中でもボランティアや介護などについて倫理学的に議論する場合、「不完全義務」という考え方は引き合いに出…

【第4回】カント道徳哲学での道徳的主体と他者との関係性について|終わりに【カント道徳哲学】

カント全集〈11〉人倫の形而上学 作者:カント 岩波書店 Amazon 4.終わりに 今回は、カントの道徳哲学の書である『基礎づけ』や『人倫の形而上学』と、『判断力批判』で語られる他者について検討した。 その結果、『基礎づけ』や『人倫の形而上学』では、道徳…

【第2回】カント道徳哲学での道徳的主体と他者との関係性について|虚言について【カント道徳哲学】

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 2.虚言について 『基礎づけ』の中でカントは「義務」(Pflicht)を4種類に分類する。それは「自分自身に対する完全義務」、「他者に対する完全義務」、「自分自身に対する不完全義務」…

【第1回】カント道徳哲学での道徳的主体と他者との関係性について|はじめに【カント道徳哲学】

判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 1.はじめに カントは、われわれの理性から普遍的な道徳法則を導き出す。この普遍的な道徳法則が、「定言命法」(Imperative Gesetz)である。カントの全体的な説明の仕方から考えると、一見、カン…

【第2回】道徳法則について-二十規制的構造と「意志」の観点からー|「定言命法」根本法式の二十規制的構造【カント道徳哲学】

実践理性批判 [カント三批判書] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 1.「定言命法」根本法式の二十規制的構造 「定言命法」の根本法式について考察する場合、この「命法」には、二十規制的構造が存在するという解釈がある。 二十規制的構造とは、簡単に言…

【第1回】道徳法則について-二十規制的構造と「意志」の観点からー|はじめに【カント道徳哲学】

実践理性批判 [カント三批判書] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon はじめに 『道徳形而上学の基礎づけ』(以下『基礎づけ』と略記)と、『実践理性批判』でのカントの道徳法則の表現は異なる。 『基礎づけ』の場合、カントは道徳法則を「汝の格率が普遍…

【第5回】『基礎づけ』と『実践理性批判』での「義務」の比較検討-道徳法則との関わりから-|終わりに【カント道徳哲学】

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 5.終わりに 以上、われわれは「義務」と道徳法則との関わりについて、検討してきた。その結果、『基礎づけ』でカントは「義務」から「定言命法」の根本方式という道徳法則を導出し、…

【第4回】『基礎づけ』と『実践理性批判』での「義務」の比較検討-道徳法則との関わりから-|『実践理性批判』での「義務」と道徳法則【カント道徳哲学】

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 4.『実践理性批判』での「義務」と道徳法則 『基礎づけ』で「義務」は道徳法則を導出するものとして設定されている、ということを確認できた。 『実践理性批判』では、カントはどの…

【第3回】『基礎づけ』と『実践理性批判』での「義務」の比較検討-道徳法則との関わりから-|『基礎づけ』での「義務」と道徳法則【カント道徳哲学】

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 3.『基礎づけ』での「義務」と道徳法則 『基礎づけ』で「義務」は、どのように説明されているのか。結論から先に述べると、「義務」は道徳法則を導出するものとして設定されている。…

【第2回】『基礎づけ』と『実践理性批判』での「義務」の比較検討-道徳法則との関わりから-|「義務」についての概要【カント道徳哲学】

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 2.「義務」についての概要 『基礎づけ』でも『実践理性批判』でも、カントは、「義務」を、人間の意志を規定する強制力として規定する。カントによれば、「義務」という概念は、単に…

【第1回】『基礎づけ』と『実践理性批判』での「義務」の比較検討-道徳法則との関わりから-|はじめに【カント道徳哲学】

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 1.はじめに 本稿の目的は、『道徳形而上学の基礎づけ』(以下『基礎づけ』と略記)と『実践理性批判』それぞれの中で、語られるカントの「義務」について検討することである。今回は…