3.『基礎づけ』での「義務」と道徳法則
『基礎づけ』で「義務」は、どのように説明されているのか。結論から先に述べると、「義務」は道徳法則を導出するものとして設定されている。これは、『基礎づけ』の第2章でのカントの議論の流れを検討すれば理解できる。
『基礎づけ』の第2章で、カントは「義務」から「命法」を導出する。「義務」は「べし」という「命法」で、表現できる。この「命法」をカントは2種類に分類する。
まず1つ目は「仮言命法」である。「仮言命法」は、個々人が自らのために必要とされ目的のための手段を指示する。この命法は「もし(ある目的)xを欲するならば、(その手段)yをせよ」と、定式化される。
もうひとつの命法は、「定言命法」である。この命法は、ある行為者の達成したい目的とはまったく無関係に、単に客観的に善い行為のみを命じる。「定言命法」は、その行為の結果とは無関係に存在する命令形式である。「定言命法」は、端的に「○○せよ」と定式化される「命法」である。
「仮言命法」は、道徳の最上原理に値しないとカントは考える。なぜなら、この命法は個別的で偶然的であるからである。
他方、「定言命法」は必然的であり絶対的である。カントは「仮言命法」を斥けて、「定言命法」を採用する。そして、「汝の格率が普遍的法則となることを、その格率を通じて、汝が同時に意欲することができるような、そうした格率に従ってのみ行為せよ」(Ⅳ,421;104)という道徳法則を「定言命法」の根本法式として、定式化する。
以上のように、カントは『基礎づけ』で、「義務」から「命法」を導出し、それを「仮言命法」と「定言命法」に分類し、さらに「定言命法」を道徳法則として採用する。このステップを踏んで、カントは「義務」から道徳法則を導出する。【続く】