ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【第5回】『基礎づけ』と『実践理性批判』での「義務」の比較検討-道徳法則との関わりから-|終わりに【カント道徳哲学】

 

5.終わりに

  以上、われわれは「義務」と道徳法則との関わりについて、検討してきた。その結果、『基礎づけ』でカントは「義務」から「定言命法」の根本方式という道徳法則を導出し、他方『実践理性批判』で、カントは純粋実践理性の根本法則という道徳法則から「義務」を導出している、ということが分かった。

 

 この結果から、カントの「義務」という概念と道徳法則は密接な関連を持つ、ということが結論づけられる。カントの「義務」を理解する場合、道徳法則に対する十分な理解も、同時に要求される。

 

 今回は、それぞれの表現の仕方が異なるにも関わらず、「定言命法」の根本方式と、純粋実践理性の根本法則を同一の道徳法則としてみなした。なぜなら、「定言命法」の根本法則と純粋実践理性の根本法則は表現が異なっているが、同一の道徳法則を示すように思われるからである。

 

 なぜ、両者は同一のものと考えられるのであろうか。この問題に関して今回は言及せず次の機会に譲ることにする。【終わり】

 

<参考文献>

Kant.I,1785:Grundlegung zur Metaphysik der Sitten(邦題:訳注・カント『道徳形而上学の基礎づけ』、宇都宮芳明著、以文社、1989年.).

―――,1788:Kritik der praktischen Vernunft

(邦題:実践理性批判、『カント全集 7』所収、坂部恵・伊古田理訳、岩波書店 、2000年.).

 

注 今回、本稿内で引用する著作はすべてアカデミー版カント全集からであり、引用に際してその巻数とページ数を記載した。

 

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