1.はじめに
『道徳形而上学の基礎づけ』(以下『基礎づけ』と略記)の中で、カントは、「義務」を2種類に分類する。それら2種類の「義務」とは、すなわち「完全義務」と「不完全義務」である。
さらにカントは、この2種類の義務を「自分自身に対する完全義務」、「他人に対する完全義務」、「自分自身に対する不完全義務」、そして「他人に対する不完全義務」の4種類に分ける。
「完全義務」について、カントは「傾向性の利益のための例外を許さない義務」(Ⅳ,421)と定義する。つまり「完全義務」とは、どのような状況や立場にあっても必ず同じように行わなければならない義務を指す。一方、「不完全義務」ついてカントは何の定義づけも行っていない。
それにもかかわらず、カントは「完全義務」と「不完全義務」を更に細分化した4つの「義務」について、それぞれに反する「格率」の例を挙げている。これによって、「完全義務」と「不完全義務」を説明する。
本稿では、筆者はこの4種類の義務に反する「格率」の論証方法に着目する。そして、「完全義務」と対比させながら、「不完全義務」について、カントがどのように説明しているかについて考察する。【続く】
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【参考文献】