ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【第4回】カントの「完全義務」と「不完全義務」について|自分自身に対する不完全義務ー自己実現の例ー【カント道徳哲学】

 

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4.自分自身に対する不完全義務ー自己実現の例ー

 

 第3に、「自分自身に対する不完全義務」に反する「格率」について検討する。

 

 カントは、「安楽な状況に身を置いているとき、我々は自己開発を目指すのではなく、むしろ快楽に溺れる」という「格率」が、普遍的法則になり得るかどうかを考えた。

 

 この「格率」が普遍的法則として考えられるかどうかについて、カントは一旦認めることで検討を始めた。

 

 しかし理性的存在者として、われわれはこの「格率」を追求することはできないとして、カントはこの「格率」を即座に拒否した。なぜなら、われわれは自らの才能を開発することを必然的に意欲するからである。

 

 この「格率」は、私たちの必然的な意欲と矛盾するため、カントはこの「格率」が「他人に対する不完全義務」に反すると判断し、普遍的法則として成立しないとした。しかし、カントのこの説明には問題がある。

 

 『基礎づけ』の中で、なぜわれわれは自らの才能を開発することを必然的に意欲するのか、という理由に一カントは切触れていない。

 

 カントによれば、とにかくわれわれは自らの才能を開発することを必然的に意欲するようである。この点で、カントは「自分自身に対する不完全義務」についての説明は、不十分であると考えられる。【続く】

 

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