Es irrt der Mensch, solang er strebt.

人間は努力する限り誤るものである。

カント4種類の「義務」について

1.カント4種類の「義務」

  カントは『基礎づけ』の中で「義務」を4種類に分類する。すなわちそれは「自分自身に対する完全義務」、「他人に対する完全義務」、「自分自身に対する不完全義務」そして「他人に対する不完全義務」である。この「義務」から次のことが分かる。

 

 すなわち「完全義務」は、われわれの思考によって判断可能であるということである一方「不完全義務」について理性的存在者としてのわれわれが意欲することができるかどうかによって判断可能である、ということである。「完全義務」について考える際、カントはそれに反する「格率」が普遍的法則になり得るかどうかを考える。この「格率」は自ら考えることによって自己矛盾に陥る。それでこの「格率」は普遍的法則になり得ないとカントは結論づける。

 

2.「義務」と「格率」について

 逆に考えると「完全義務」に当てはまる「格率」を自ら考えることによって、それが自己矛盾しているかどうかで判定できるとカントは考える。「完全義務」の場合、もしもある「格率」をわれわれが考えることによって矛盾が無いと判定されるならば、この「格率」は「完全義務」として認められる。

 

 他方「不完全義務」は単に矛盾無く考えることができればよい、という訳にいかない。「不完全義務」は「格率」が普遍的法則として考えることができるということと同時に、理性的存在者として意欲できなければ、その「格率」は「不完全義務」に値しない。「不完全義務」について考える時カントはこの「義務」の「格率」が理性的存在者としてのわれわれの意欲と矛盾しているかどうかで判定する。

 

3.「義務」と「定言命法

 更にもしも「定言命法」と「完全義務」と「不完全義務」に関係があるならば、次のように解釈できる。すなわち「完全義務」は「定言命法」の<思惟における無矛盾性>に基づいて考えられている、一方「不完全義務」は<意欲における無矛盾性>に基づいて考えられているということである。

 

 <思惟における無矛盾性>とは「定言命法」の中で「格率」を普遍的法則として単に矛盾無く思惟できれば、その「格率」を普遍的法則としてみなすという性質である。カントは<思惟における無矛盾性>から「完全義務」の説明をそれに反する「格率」の例を用いて行った。

 

 他方<意欲における無矛盾性>とは、「格率」を普遍的法則として矛盾無く思惟できるのと同時に理性的存在者として矛盾無く意欲できれば、その「格率」を普遍的法則としてみなすという性質である。カントは<意欲における無矛盾性>から「不完全義務」の説明をそれに反する「格率」の例を用いて行った。

 

 以上の解釈から「不完全義務」は理性的存在者としてのわれわれが矛盾無く思惟できるのと同時に意欲することができる「義務」であると考えられる。

 

4.「義務」についての新たな問題

 この議論から新たな問題が浮上する。その問題とは理性的存在者が意欲するとはどのようにして可能か、という問題である。それは理性的存在者が「意欲する」とは単に一般的意味での欲求に基づいて「意欲する」のではない。『基礎づけ』の範囲内ではこれ以上の「意欲する」ということに関する解釈はないだろう。

知の地平―カントとウィトゲンシュタイン

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