ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【第7回】道徳教育での「主体的・対話的で深い学び」についての一考察-カント道徳教育を中心に-|終わりに【教育倫理学】

5.終わりに

  以上、平成30年度告示『高等学校学習指導要領』とカント道徳教育から、「主体的・対話的で深い学び」について検討してきた。

 

 インターネットによって、新時代の到来が社会や生活を大きく変えていく。その中で、教育活動全体を通じて「人間としての在り方生き方」に関する道徳教育の充実を図ることを、高等学校は目標に置く。近い将来に備えるため、「主体的・対話的で深い学び」による授業実践が必要である。

 

 一方で、自立した社会の一員となり自分自身の内的価値を持てる存在者となるような指針を18世紀、既にカントが示した功績は注目に値する。

 

 カントという人物のフィルターを通して、平成30年度告示『高等学校学習指導要領』での目玉である「主体的・対話的で深い学び」を検討した結果、現代の道徳教育への新たな視点が得られた。今後、カントの道徳教育に基づいた授業実践を行い検証していきたい。

 

 「トロッコ問題」や「ハインツのジレンマ」などの「モラル・ジレンマ」の授業を通して、カントの道徳教育の方法論が授業実践の中でどこまで通用するのか検証を進める。

 

 大きな変化の中で、子どもたちが活躍できる社会を目指して、理論と実践の両方を重視した研究を継続していきたい。

 

参考文献

 Kant.I,1784:Beantwortung der Frage:Was ist Aufklärung?

(邦題:啓蒙とは何か、『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』所収、中山元訳、光文社古典新訳文庫、2006年.)

―――a,1797:Kritik der praktischen Vernunft

(邦題:訳注・カント『実践理性批判』、宇都宮芳明著、以文社、1990年.)

―――b,1797:Metaphysik der Sitten

(邦題:人倫の形而上学、『カント全集第11巻』所収、吉澤・尾田訳、理想社、1969年.)

―――,1803:Immanuel Kant über Pädagogik.Herausgegeben von D.Friedrich Theodor Rink(邦題:教育学、『人間学・教育学-西洋の教育思想5-』所収、三井善止訳、玉川大学出版部、1986年.)

Mayerof.M,1971:On Caring(邦題:ケアの本質-生きることの意味 田村・向野訳 ゆみる出版 2003年.) 

田中 朋弘,1998:道徳の形而上学的基礎づけと道徳的判断、『琉球大学法文学部人間科学科学科紀要 人間科学 第2号』所収、琉球大学、1998年.

須長 一幸,2004:モラル・ジレンマ とケアの倫理、『生命倫理 2004年14巻1号』所収、日本生命倫理学会、2004年.

安井 絢子,2010:「ケア」とは何か -メイヤロフ、ギリガン、ノディングスにとっての「ケア」-、『哲学論叢(2010)37(別冊)』所収、京都大学哲学論叢刊行会、2010年.

中央教育審議会,2014: 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)、文部科学省、2014年.

西川 純,2015:すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング、学陽書房、2015年.

徳永 正直,2016:道徳教育の新たな可能性 -「市民性教育」(citizenship education)との関係を考える-、『大阪樟蔭女子大学研究紀要第 6 巻』所収、大阪樟蔭女子大学、2016年.

池谷 壽夫,2017:脆弱性,ケアと道徳教育、『了德寺大学研究紀要 第11号』 所収、了德寺大学、2017年.北村 良子,2017:論理的思考力を鍛える33の思考実験、彩図社、2017年.

河村 茂雄,2017:アクティブ・ラ-ニングのゼロ段階:-学級集団に応じた学びの深め方、図書文化社、2017年.

文部科学省,2018:高等学校学習指導要領(平成30年告示)、東山書房、2018年.

――――a,2019:高等学校学習指導要領解説 公民編(平成30年告示)、東京書籍、2019年.

――――b,2019:高等学校学習指導要領解説 総則編(平成30年告示)、東洋館出版社、2019年.

嶋崎 太一,2019:「ソクラテス式問答」と道徳教育 :カントの教育方法学、『HABITUS 23巻』所収、西日本応用倫理学研究会、2019年.【終わり】