ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【抄訳と訳注④】Tom Regan,1983:The Case for Animal Rights (p.174-pp.185)【カント道徳哲学】

The Case for Animal Rights

The Case for Animal Rights

  • 作者:Regan, Tom
  • University of California Press
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5.5 カントの立場:目的それ自体としての人間性(p.176)

 

 Kant believes the two formulation of the categorical imperative given in the above are equivalent.He is committed to thinking this because he believes that there is only one supreme principle of molality, not several. 

 

[訳]

 上記の定言命法の2つの法式化は同等であるとカントは考える。いくつかではなく、唯一最上の道徳原理だけがあると彼は確信するので、カントはこのように考える。

 

[訳注]

 「定言命法」(the categorical imperative) の2つの法式(注1)、つまり「根本法則の法式」(the Formula of Universal Low)(注2)と、「目的それ自体の法式」(the Formula of  End in Itself)(注3)は同等である。「唯一最上の道徳原理だけ」(only one supreme principle of molality)が、存在する。

 

He believes that any act whose maxim fails to pass the test of universalizability (the Formula of Universal Low) also fails the test of End in Itself, and vice versa, and that act whose maxims pass the former test also pass the latter, and vice versa.

 

[訳]

 普遍化可能性のテスト(根本法則の法式)に合格しない格率の行為すべても目的それ自体のテストに不合格であり、その逆も同様であり、前者のテストに合格する格率の行為も後者に合格し、その逆もあるとカントは考える。

 

[訳注]

 「根本法則の法式」に妥当し得ない「格率」(maxim)の行為すべては「目的それ自体の法式」にも妥当し得ないのであり、その逆も同様である。「根本法則の法式」に妥当し得る格率の行為も「目的それ自体の法式」に妥当し得るし、その逆も同様である。

 

There is no act, he thinks, that passes (or fails) one of the tests without also passing (or failing) the other. This assumed equivalence between the two formulation of the categorical imperative will occupy our attention at the conclusion of our discussion of Kant’s position.

 

[訳]

 テストのひとつに合格(または失敗)しても、もうひとつに合格(または失敗)しない行為は存在しないとカントは考える。定言命法の2つの法式化の間で想定された同等性は、カントの立場の議論の結論に対してわれわれの注意を引くだろう。

 

[訳注]

定言命法」の「根本法則の法式」に「格率」が妥当し得るのであれば、「目的それ自体の法式」にも妥当し得る。また、[定言命法」の「根本法則の法式」に「格率」が妥当し得ないのであれば、「目的それ自体の法式」にも妥当し得ない。このように、「定言命法」の「根本法則の法式」と「目的それ自体の法式」の中に「想定された同等性」(assumed equivalence)がある。このカントの結論は、われわれの注目に値する。【続く】

 

(注1) レーガンは、ペイトンの「定言命法」の法式化を踏襲していると考えられる。

 

【参考:The Categorical Imperative: A Study in Kant's Moral Philosophy】

 

(注2) 「汝の格率が普遍的法則となることを、その格率を通じて汝が同時に意欲することができるような、そうした格率に従って行為せよ。」(Ⅳ,421)

 

(注3)「人間および一般にあらゆる理性的存在者は、目的それ自体として現存し、あれこれの意志によって任意に使用される手段としてのみ現存するのではなく、自分自身にむけられた行為においても、他の理性的存在者にむけられた行為においても、あらゆる行為においてつねに同時に目的として見られなければならない。」(Ⅳ,428)

 

【参考:道徳形而上学の基礎づけ】

 

「普遍化可能性」について次の文献も参照。

 

※誤訳や認識不足などございましたら、コメント欄に書き込みして頂けると幸いです。

 

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