ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【第2回】飼い猫のひみつ|「ネコ」好きなら知っておきたい!「ネコ」の3つの習性【ネコ学】

 

 前回の記事で、人間と「ネコ」との関係性を「飼いネコ」誕生の歴史から紐解いてきた。

 

【参考:前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 その結果、次の2点が明らかになった。

 

・「イエネコ」のルーツは「リビアヤマネコ」である。

・「ネコ」が人に歩み寄った理由は、人家やその周辺からネズミという恩恵を得るため。

 

 第1回に引続き、本書に沿って「ネコ」の3つの習性について検討する。この作業を通して、「ネコ」の気持ちをわれわれはより理解できるようになるだろう。

 

[内容]

■「ネコ」の気分は4通り

■転位行動

■ネオホビア

■まとめ

 

■「ネコ」の気分は4通り

 飼い主にべったりだった「ネコ」が、いきなり野生状態になることがある。

 

 例えば、お腹を上にしてゴロゴロとのどを鳴らすのでお腹を撫でていたら、数秒でツメを立ててくることがある。

 

 これは、「家ネコ」気分から「野生ネコ」気分へと切り替わった現象である。切り替えパターンは、他にもある。

 

 それは、単独性を重視する「大人ネコ」気分から「子ネコ」気分への切り替えである。気分の切り替えは、特に「飼いネコ」に特徴的である。

 

 気分の切り替えを具体的にまとめると、次の4通りである。

 

・「家ネコ」気分:(例) 安心しきって、お腹を見せて無防備に眠ったり警戒心を解いてくつろいだりする様子。

・「野生ネコ」気分:(例) 突然夜中に走り回る。いわゆる「夜の運動会」。

・「大人ネコ」気分:(例) 仕留めた獲物を飼い主のところへ持ってくる。この行動は「ネコ」にとって、自分では獲物を捕ってこられない飼い主の面倒を見ている。

・「子ネコ」気分:(例) シッポを立てて甘えたり「遊んで」とアピールしたりする。大人になっても「子ネコ」の頃のように飼い主に甘える。

野生の気分
近くに飼い主がいたとしても、すっかり安心しきって、おなかを見せて無防備に眠ったり、警戒心を解いてくつろいだりといった様子
近くに飼い主がいたとしても、すっかり安心しきって、おなかを見せて無防備に眠ったり、警戒心を解いてくつろいだりといった様子
近くに飼い主がいたとしても、すっかり安心しきって、おなかを見せて無防備に眠ったり、警戒心を解いてくつろいだりといった様子
飼い猫の気分イイエネコ
飼い猫の気分
飼い猫の気分
飼い猫の気分
飼い猫の気分
猫の4つの気分
猫の4つの気分

 

 「ネコは気まぐれである」と、よく言われる。4通りの気分が瞬時に切り替わるので、われわれには気まぐれのように感じられる。「今どんな気持ちか」を理解する上でも、「ネコ」の4通りの気分を知ることは必要である。

「猫は気まぐれ」などと言われることがありますが、それは、4つの気分が瞬時に切り替わるせいで、そこに居合わせた人には気まぐれのように感じられるのです。「愛猫が今、どんな気分なのか」を知るためにも、ここでは猫の4つの気分をご紹介します。

 

【参考:甘えているネコ】

f:id:chine-mori:20210822152315p:plain

             【写真】https://www.pakutaso.com/20190335067post-19880.html からの画像



 ■転位行動

 

 「ネコ」は、単独のハンターとして進化した。しかし、狩りの成功率は10%前後である。失敗すると、「ネコ」でも落ち込む。この行動を、「転移行動」という。

 

 「転位行動」によって、気分を紛らわせ「ネコ」は数秒で気分転換ができる。

 

【参考:「ネコ」のあくび】

f:id:chine-mori:20210818163308j:plain

                        【写真】Jonathan SautterによるPixabayからの画像

 

 猫が「転位行動」を行うときは、主に次の6つである。

 

・失敗したとき:(例) 獲物を捕まえようとして、失敗したとき。

・行動を中断させられたとき:(例) 自分が行きたい場所を、遮られたとき。

・仲がよくない猫と会ったとき:(例) 仲のよくない猫の近くを、通らなければならないとき。

・何かをガマンしたとき:(例) 窓ガラスの向こうに鳥など獲物がいるのに、獲れないとき。

・興奮したり驚いたりしたとき:(例) 遊んでいて興奮したり、急に驚いたりしたとき。

 

  では、「ネコ」がとる「転位行動」は具体的にどんな行動だろうか。主に、次の4つである。

 

・グルーミング:短時間に、一部分を集中的になめるような動作。舐める場所は、鼻・肩・前足・後ろ足など。

・爪とぎ:ストレスを感じたとき、壁やソファーなどに爪を立てる。

・あくび:のんびりしているのではなく、邪魔されたことや叱られたことへの抗議の意味がある。

・マウンティング:自分の優位性を、アピールする行動。「転位行動」のひとつとして、マウンティングの体勢を取ることもある。

 

 ストレスを感じたとき、「ネコ」は「転位行動」をとる。気分転換を図ることで、「ネコ」は上手くストレスに対処している。

 

■ネオホビア

 

 「ネコ」だけでなく、多くの動物は初めて見るものを警戒する。「ネコ」の中では、好奇心と警戒心が天秤に乗ってせめぎ合う。

 

 強い探索心と警戒心は、「ネコ」の特徴的な気質である。この気質は、進化を重ねる上で身に付けたネコの生存戦略である。

 

 新しいものへの用心深さは、動物行動学では「ネオホビア」(新しいもの恐怖症)と呼ばれる。

 

 新しいものへ接するとき、われわれがユーモラスに感じるくらい動物は「臆病者」な行動をとることがある。

 

【参考:ネオホビア】

f:id:chine-mori:20210818162642j:plain

                             【写真】Dim HouによるPixabayからの画像 

 

 一方、「ネコ」を捕まえるため新しい罠にかからなくて「頭がいい」と思うこともある。

 

 動物の用心深さは「ネオホビア」によるものであり、臆病なわけでも賢いわけでもない。この習性は、毒入りのものを避ける仕組みとなる。

 

 自然界でもキノコや腐った肉など有害なものは、たくさんある。このように、ほんの一口だけ食べるという習性を身に付けた者だけが生き延びてきた。

 

 家の近所で光るCD盤をぶら下げていたり、ペットボトルが地面や塀などに置かれている光景を目にする。「ネオホビア」によれば、これは10日もすれば「ネコ」は慣れてしまう。

 

【参考:街角に置かれた猫除けのペットボトル】

f:id:chine-mori:20210822152857p:plain

                 【写真】https://www.pakutaso.com/photo/73426.html からの画像

 

 危険物かどうか瞬時に判断する推理力は、「ネコ」にはない。厳しい世界を生き抜く上で、新しいものへの慎重に接して正しく判断し学習する力を「ネコ」は身に付けている。

 

■まとめ

 

 以上、ネコの3つの習性について確認した。まとめると、次の3点である。

 

・「イエネコ」は「家ネコ気分と野生ネコ気分」そして「大人ネコ気分と子ネコ気分」に切り替わる。

・気分転換のため、「ネコ」は「転移行動」をとる。

・「ネコ」の気質である新しいものへの用心深さは、「ネオホビア」と呼ばれる。

 

 「伴侶動物」として「ネコ」は、われわれ人間と深い関係にある。以上のような「ネコ」の習性を理解することで、彼/彼女らとより親密な関係をわれわれは築けるようになるかもしれない。【終わり】

 

【参考文献】