はじめに
入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第22回である。
【前回の記事】
最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。
[内容]
■原文
■単語と文法事項の確認
■私訳
■本書の訳
■私訳と本書の訳の比較
■原文
So when we probe our reactions to price gouging, we find ourselves pulled in two directions; we are outraged when people get things they don't deserve; greed that preys on human misery, we think, should be punished,not rewarded. And yet we worry when judgments about virtue find their way into law.
■単語と文法事項の確認
・probe:探る
・pulle:引っ張る
・outraged:憤慨させる
・deserve:価値がある
・preys:傷つける
■私訳
それでわれわれが法外値上げへの反応を探るとき、われわれは2つの方向性に引っ張られる。すなわち価値がないものを手に入れるとき、われわれは憤慨する。われわれが考えるように、人の不幸を食い物にする強欲は罰せられるべきで、報酬を与えるべきではない。そして美徳についての判断が法の中にその方法を見つけるとき、われわれは心配にもなる。
■本書の訳
便乗値上げに対するわれわれの反応を探ってみると、自分が2つの方向に引っ張られていることがわかる。その人にふさわしくないものを手に入れている人がいれば、われわれは憤りを感じる。他人の窮状を食い物にする強欲は罰せられるべきで、報奨を与えられるべきではない、とわれわれは考える。それでもやはり、美徳に関する判断が法律に入り込むと、われわれは心配にもなるのだ。 (p.26)
■私訳と本書の訳の比較
ここでいう「2つの方向に引っ張られ」(pulled in two directions)るとは、道徳と法の葛藤であると考えられる。
「憤りを感じ」(outraged)たり、「強欲は罰せられるべき」(should be punished)であると考えることは、道徳的感情や判断から生じるものである。一方で、「美徳に関する判断」(judgments about virtue)に法律が入り込むと、われわれは心配にもなる。
この点に、道徳と法の葛藤をサンデルは見出している。【続く】
【参考文献】