ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

【第3回】伝統か差別か|オランダの「クリスマス」と沖縄県の「闘鶏」【動物倫理学】

動物からの倫理学入門 作者:伊勢田 哲治 名古屋大学出版会 Amazon 「前回の記事で、オランダの「クリスマス」と沖縄県の「闘鶏」は、それぞれが「伝統」や「文化」を前提にしていることを述べた。 【参考:過去記事】 chine-mori.hatenablog.jp 倫理学的観点…

【第2回】伝統か差別か|オランダの「クリスマス」と沖縄県の「闘鶏」【動物倫理学】

写真出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 前回の記事で、「伝統」や「文化」を前提に人間や人間以外の動物の権利を傷つけることは容認できるだろうかという問題提起を行った。この問題に関して、オランダの「クリスマス」について取り上げ…

【第1回】伝統か差別か|オランダの「クリスマス」と沖縄県の「闘鶏」【動物倫理学】

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 人間であっても、人間以外の動物であっても、「伝統」や「文化」という固有の価値観に基づいて、人間やその他の動物を差別的に扱うケースがある。このような行為によって、地域や特定の集団の「文化的…

【カント道徳哲学】カント「不完全義務」の誤解の原因|2つの事例

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon カントの「不完全義務」という考え方は、応用倫理学の中で取り上げられる。中でもボランティアや介護などについて倫理学的に議論する場合、「不完全義務」という考え方は引き合いに出…

【地域猫活動】TNRに行ってきた(2019年7月6日)

2019年7月6日に、TNR活動に参加。その模様を、写真と共に紹介する。 とある県の、とある島。古い集落が、今も残るのどかな田園地帯。(遺棄する恐れがあるので場所は伏せる) 早く集合場所に着いてしまったので、しばらく周囲を散策。 ヤギを発見。夕方近く、…

【第4回】カント道徳哲学での道徳的主体と他者との関係性について|終わりに【カント道徳哲学】

カント全集〈11〉人倫の形而上学 作者:カント 岩波書店 Amazon 4.終わりに 今回は、カントの道徳哲学の書である『基礎づけ』や『人倫の形而上学』と、『判断力批判』で語られる他者について検討した。 その結果、『基礎づけ』や『人倫の形而上学』では、道徳…

【第3回】カント道徳哲学での道徳的主体と他者との関係性について|拡張された考え方の格率【カント道徳哲学】

判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 3.拡張された考え方の格率 『基礎づけ』や『人倫の形而上学』で、カントは他者よりも、道徳的主体である自己を問題にしていた、ということが分かった。 一方、『判断力批判』で、他者との関係性…

【第2回】カント道徳哲学での道徳的主体と他者との関係性について|虚言について【カント道徳哲学】

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 2.虚言について 『基礎づけ』の中でカントは「義務」(Pflicht)を4種類に分類する。それは「自分自身に対する完全義務」、「他者に対する完全義務」、「自分自身に対する不完全義務」…

【第1回】カント道徳哲学での道徳的主体と他者との関係性について|はじめに【カント道徳哲学】

判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 1.はじめに カントは、われわれの理性から普遍的な道徳法則を導き出す。この普遍的な道徳法則が、「定言命法」(Imperative Gesetz)である。カントの全体的な説明の仕方から考えると、一見、カン…

【第4回】「趣味判断」について-『判断力批判』に即して-|結びにかえて【カント道徳哲学】

判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 4.結びにかえて 以上、「趣味判断」について検討してきたが、『判断力批判』に即して「不完全義務」についても考察する必要がある。また、今後は「趣味判断」と道徳との関わりについても検討が…

【第3回】「趣味判断」について-『判断力批判』に即して-|「共通感官」について【カント道徳哲学】

判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 3.「共通感官」について 「趣味判断」には主観的な判断が必要であるため、カントは「共通感覚」という概念を導入した。『判断力批判』の文脈から考えると、「共通感覚」とは普遍的に有効な判断を…