前回の記事で、「伝統」や「文化」を前提に人間や人間以外の動物の権利を傷つけることは容認できるだろうかという問題提起を行った。この問題に関して、オランダの「クリスマス」について取り上げた。
【参考:過去記事】
「伝統」や「文化」を理由に、オランダの「ズワルトピート」と同様の構造が、人間以外の動物でも見られる。人間以外の動物を「娯楽」目的で不当に扱う事例は、世界各国に未だ数多く存在する。そのような事例のひとつとして、今回は沖縄県の「闘鶏」を取り上げたい。
[内容]
【第1回】オランダのクリスマス
【第2回】沖縄で行われている「闘鶏」
【第3回】ヒュームの法則-「である」から「べき」は導けない
■沖縄で行われている「闘鶏」
「闘鶏」は、軍鶏(シャモ)を飼育し、蹴爪を切って飼育管理することから「タウチー」と呼ばれる沖縄県の伝統文化である。「闘鶏」は、沖縄県各地で毎週開催されており、一部ではこの伝統文化を「タウチーオラセー」と呼んでいる。
「闘鶏」の負けた軍鶏は、豚のエサにするか縛って畑や人に見られない場所に遺棄することがある。また、薬を飲ませて強制的に闘わせるため、軍鶏自体が食用に適さない状態になってしまうため、食用にすることはほとんどない。
「闘鶏」に反対されると、周囲に見られないように隠れて遺棄されるのが現状である。足や羽を縛られ、エサ袋に入れられたり、誰も気付かない草むらに捨てられる。生命力が非常に強い軍鶏は、長時間苦しんで死に至る。
「闘鶏」として利用できるのはオスの鶏である。大量にふ化させ、雌雄の識別ができた頃、「闘鶏」に利用できないメスは殺処分される。
【参考:沖縄で行われいる闘鶏の真実】
「闘鶏」でケガを負った鶏が捨てられる事案は、県内各地で相次いでいる。この事実を受けて2019年11月に「闘鶏禁止」条例の陳情書が、糸満市議会に提出された。この陳情書を提出したのは、市内で「闘鶏」で負傷し遺棄されたとみられる鶏を保護している本田京子さんである。
残念ながら不採択となったが、『琉球新報』によれば、「諦めず、みなで議論を深めていきたい」と陳情者の本田さんは述べた。
記事によれば、「闘鶏を禁止すれば、闘牛やヒージャーオーラセー(闘山羊)にも議論が及び、沖縄文化の否定につながる可能性があると、みんなが恐れているのだと思う」と、本田さんは今回の不採択となった理由を分析している。
【参考:琉球新報(2020年9月30日)】
「闘鶏」を容認し継続する住民もいる理由は、「伝統」や「文化」だけでなく、「娯楽」や「経済」など複数ある。また、沖縄県は「闘牛」や「闘山羊」など、人間の「娯楽」目的で動物を使用する伝統的な事例が多いことも事実である。
日本には、古くから「闘犬」や「闘牛」などの伝統文化が、様々な地域に存在する。外国でも人間の「娯楽」のため、「伝統」を理由に、人間以外の多くの動物たちが犠牲になっていることは確かである。
人間にしろ動物にしろ、「伝統」や「文化」を理由に不当に扱うことは果たして容認できるだろうか。次回、その問題について「ヒュームの法則」を参考に考察する。【続く】
↓参考にしたHP↓
※2020年9月29日「沖縄タイムス」HPより
「闘鶏の禁止を」陳情不採択 「文化ではなく賭博だ」との指摘も 糸満市議会 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス
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