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「ネコを飼っています」という飼い主の中には、外で飼育している方もいる。筆者の周囲にも、首輪を付けていながらエサはどこか外で食べてくるからと基本的にエサを与えず、放し飼いの場合もある。それでは、「野良ネコ」や「地域ネコ」とあまり変わらない。
できるだけ長く愛猫と共にいたいと考えるのであれば、「完全室内飼育」でなければならない。家の中は狭いので、外で自由にさせたいという気持ちもあると思うが、このことが愛猫の寿命を縮めることになる。
■外ネコと家ネコの平均寿命は違う
外で生活しているネコと室内で生活しているネコでは、決定的に平均寿命が違う。
「地域猫活動アドバイザー」石森信雄氏の資料によれば、外で生活しているネコの場合、平均寿命は4年から5年である。一方、室内で生活しているネコの場合、平均寿命は15年から20年である。
【参考:標準の資料 ノラ猫トラブルのない地域社会をめざして(PDF:6.9MB)】
なぜ、このように平均寿命が違うのか。
これは、外で生活するネコの死因から、明らかになる。外で生活するネコの死因の第1位は、「路上死」である。
ネコの習性として、「縄張り意識」の強さがある。ネコは、「食べる場所」や「寝る場所」が決まっている。「食べる場所」や「寝る場所」などが道路と反対側にあると、「路上死」の危険性が高まる。
【参考:過去記事】
外で生活するネコの死因の第2位は、腎臓病である。原因は、「ゴミ漁り」や地域住民の「エサやり」である。お腹を空かせたネコが、ゴミを漁り人間の残した食べ物を口にする。
また、地域住民が好意で家にある残り物をネコに与える。人間とネコでは、摂取してよい塩分量が違う。よかれと思ってご飯を何気なく与えてしまい、ネコの寿命を縮めてしまうことになりかねない。
外で生活すると、ネコの危険リスクが格段に高まる。時間が来たら、外から帰ってくる愛猫も、「路上死」や腎臓病などのリスクと背中合わせで生活している。
このリスクを避けるためにも、伴侶動物としてネコを飼育するならば、外で飼育するのではなく、「完全室内飼育」でなければならない。
■愛猫を外に出さない工夫
ネコを屋内で飼育したとしても、脱走や失踪は起こりうる。どのような具体策をとればよいか。我が家で実践していることを2つ紹介する。
①玄関のドアの開閉に注意する
よく出入りする玄関の出入りに、細心の注意を払う。出かけるときは、背中を向けながらドアを閉める。帰宅した時、声を掛けながら、わざと荷物を引きずるようにしながら玄関を開けて入る。
2重にドアを付けるような特別なことをしなくても、少し注意を払えば脱走は防げる。少なくとも、この方法で我が家は1度も脱走したことはない。
②ネコにとって心地よい空間を作る
ネコの特徴のひとつとして、「縄張り意識」がある。家の中をネコにとって心地よい空間にし、「縄張り」として意識させる。我が家で特に気を付けたことは、トイレの設置の方法であった。
我が家は猫ネコを4頭飼育しているが、トイレの数は4つである。原則、トイレの数は飼育頭数プラス1である。
【参考:ネコ用トイレ】
しかしこの原則を守ると、家中がトイレだらけになる。その代わり、トイレ掃除を1日2回にしたり、少し広めのトイレを設置したり工夫した。
【参考:ネコ砂】
ネコにとって、トイレは大切な空間である。我が家もトイレが気に入らなくて、ネコたちがストレスになっていた時期があった。試行錯誤の末、トイレを清潔に保つこととトイレのサイズを意識した。今のところ、特に問題はない。
その他、複数飼育することや、一緒にできるだけ長い時間遊ぶことも、愛猫にとって居心地のよい空間となる。
とにかく、われわれ飼い主がネコにとって心地のよい空間を工夫しながら、共に生活する道を探っていくしかない。
■伴侶動物は人間と共存しながら生活している
動物といっても、「野生動物」や「家畜」など一括りにはできない。特に、イヌやネコなどの「伴侶動物」は長年人間と共存しながら、生活してきた。
飼育不可能になったから「野性に返す」という口実を使って、イヌやネコを遺棄するなどの行為は飼い主として無責任であるだけでなく、長年の彼/彼女たちとわれわれとの関係性と矛盾する。
【参考:環境省_虐待や遺棄の禁止[動物の愛護と適切な管理]】
愛犬や愛猫などの伴侶動物は、「ご飯がもらえるから」とか「優しくしてくれるから」という単純な理由だけでなく、われわれ人間を無条件に受け止めてくれる。
われわれ飼い主も、単に「癒やし」や「カワイさ」を彼/彼女たちに求めるだけでなく、同じ空間で生活する者として接しなければならない。【続く】
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【その他参考文献】