ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#21】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第21回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

The virtue argument, by contrast, rests on a judgment that greed is a vice that the state should discourage. But who is to judge what is virtue and what is vice? Don't citizens of pluralist societies disagree about such things? And isn't it dangerous to impose judgments about virtue through law? In the face of these worries, many people hold that government should be neutral on matters of virtue and vice; it should not try to cultivate good attitude or discourage but ones. 

 

■単語と文法事項の確認

・by contrast:対照的に 

・rest on A:Aに依存する 

・greed:強欲 

・discourage:妨げる 

・impose:課す 

・cultivate:育成する 

 

■私訳

対照的に、美徳論は、強欲は州が妨げるべき悪徳であるという判断に依存する。しかし何が美徳かそして何が悪徳かを誰が判断すべきか。多元的社会の市民がそのようなことについて支持しないのか。そして美徳についての判断を法を通して課すのは危険ではないだろうか。そのような心配に直面して、政府は美徳と悪徳の問題について中立的でなければならないと多くの人々は考える。すなわち、よい態度やそうでないことを妨ようとすべきではない、ということである。

 

■本書の訳

これに対し、美徳論は、強欲は州が押さえ込むべき悪徳だという判断に基づいている。だが、なにが美徳で何が悪徳顔誰が判断すべきなのだろうか。多元的な社会の市民の意見は、そうしたことについては一致しないのではないだろうか。それに、美徳に関する判断を法律によって押し付けるのは危険ではないだろうか。こういう懸念があるため、美徳と悪徳の問題について政府は中立であるべきだと多くの人々は考える。政府というものは、良い心構えをはぐくもうとか、悪い心構えを改めさせようなどと企てるべきではない、というわけだ。 (p.26)

 

■私訳と本書の訳の比較

 「美徳論」(the virtue argument)に立てば、「強欲は州が押さえ込むべき悪徳」(greed is a vice that the state should discourage)であると判断され得る。一方、「多元的な社会の市民」(citizens of pluralist societies)の中では、このような意見は支持できない。

 

 本書は、この問題を美徳論の「ジレンマ」と呼ぶ。このジレンマに政治哲学の重要問題が現れている、とサンデルは指摘する。【続く】

 

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【参考文献】