はじめに
入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第16回である。
【前回の記事】
最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。
[内容]
■原文
■単語と文法事項の確認
■私訳
■本書の訳
■私訳と本書の訳の比較
■原文
But the outrage at price-gougers is more than mindless anger. It gestures at a moral argument worth taking seriously. Outrage is a special kind of anger you feel when you believe that people are getting things they don't deserve. Outrage of this kind is anger at injustice.
■単語と文法事項の確認
・mindless:思慮に欠ける
・gesture:身振りで示す
・deserve:値する
■私訳
しかし法外な値上げへの憤りは思慮に欠ける怒り以上のものである。それは真剣に行うに値する道徳的議論である。人々が値しないものを得ていると思っているとき、憤りは一種の特別な怒りである。この種の憤りは不正義の怒りである。
■本書の訳
とはいえ、便乗値上げに対する憤りは考えなしの怒りにとどまらない。そこには、真剣な検討に値する道徳的議論が現れている。憤りとは特別な種類の怒りであり、誰かが何かを不当に手にしていると思うときに生じる。この種の憤りは不正義に対する怒りなのだ。(p.20ーpp.21)
■私訳と本書の訳の比較
直訳を意識すると、ぎこちない文章になってしまう。本書は、サンデルの意図を汲み取った訳であることを改めて感じた。
さて、サンデルは「憤り」(outrage)を「不正義に対する怒り」(anger at injustice)と定義している。この感情は、理性から来る感情と理解していいのだろう。【続く】
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【参考文献】