ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【第2回】保護猫カフェ「球美にゃんこ亭」に行ってきた|離島特有の現状と課題【久米島町】

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 2021年9月23日に久米島町唯一の保護猫カフェ「球美にゃんこ亭」(一般社団法人にゃんこ亭)が、オープンした。

 

 カフェの運営にあたる、代表理事K氏と専務理事A氏から、久米島町の現状と保護猫/地域猫活動の拠点として「球美にゃんこ亭」の方向性を聞くことができた。

 

 今回は、その2回目である。

 

【参考:過去記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

[内容]

・【第1回】久米島町の現状

【第2回】「球美にゃんこ亭」の方向性

【第2回】感想

 

【参考:店内の様子】

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成猫の部屋。子猫と違い落ち着いた様子。去勢・不妊手術を受けた「さくらねこ」もいた。

【参考:店内の様子】

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成猫の部屋。ネコは「寝子」ともいう。好きな場所でそれぞれの時間を過ごす。

 

■ 「球美にゃんこ亭」の方向性

 「球美にゃんこ亭」の方向性は次の2点にまとめられる。

 

①保護猫/地域猫活動のランドマーク

②「TNR」より「TNTA」に力点

 

 以下、この2点について深掘りする。

 

①保護猫/地域猫活動のランドマーク

 カフェの運営にあたる専務理事A氏の話によれば、これまで久米島町には保護した猫を預かったり譲渡したりする施設がなかった。

 

 また猫に関する依頼・相談・苦情に関して、行政もどうしていいか分からずなかなか対策が進まなかった。

 

 その結果、次の2点のような問題も起こった。

 

・漁港で子猫を海に投棄する。

・別の集落に猫を移動させる。

 

 この話だけで判断すると、「残酷だ」とか「動物虐待だ」という印象を持つ読者もいるかもしれない。しかし、住民も生活がかかっている。

 

 猫は「縄張り意識」が強く、漁港や住宅街など生活圏が人間と同じ「外ネコ」もいる。久米島町には実質的に受け皿が存在しなかったので、漁師や他の住民の身になれば止むを得ないと考えざるを得ない。

 

 このような現状から、住民と猫の問題を解決するため「保護猫カフェ」の存在は大きい。住民とネコの問題に関する相談窓口となり、ボランティアの方々と連携を図り時に行政につなぐ。

 

 住民とネコの間に立つ役割を果たすという意味で、保護猫カフェ「球美にゃんこ亭」を久米島町のランドマークとして位置付けたい、とA氏は語った。

 

②「TNR」より「TNTA」に力点

 「久米島の現状を考えて「TNR」より「TNTA」に力を入れている」と、両氏は語っていた。

 

【参考:ペットマナープロジェクトおのみち【TNR・TNTA活動について】

onomichi.mypl.net

 

 なぜなら、猫の繁殖力に対して猫活動を行う環境が久米島町は整っておらず、「TNR」で進めるとなかなか追いつかないからである。

 

 事実、1匹の雌猫から、1年間で子猫が約30匹生まれる。2年後には80匹以上になり、3年後には2,000匹以上になる。

 

【参考:NPO法人 ねこと人と地域の命をつなぐ会】

npo-ccc.okinawa

 

 加えて、去勢・不妊手術後の「地域猫」の見守りやエサやりなども行うとなると、現実的に厳しい。保護した猫を去勢・不妊手術後に飼い主が大切に育ててくれることを考えると、「TNTA」の方が久米島町に適している。

 

 このように地域猫活動を進める一方で、「球美にゃんこ亭」は課題を抱えている。それは、「地域猫活動と島内の生態系維持の両立」である。

 

 もともと久米島町には、「久米島ホタル」などの固有の生物が存在する。この「固有種」保護の観点からすると猫は「外来種」に位置づけられる。

 

 糞尿被害など久米島の「固有種」に対し問題化された時点で、A氏の話によれば、もともと久米島町には1,000匹から2,000匹程度「外ネコ」が存在していたと推測される。

 

【参考:久米島ホタルの会】

kumejimahotaru.jimdofree.com

 

 一方、町内では住民にとって「害獣」となるネズミを彼/彼女たちが駆除していたという。もしも町内すべての猫に去勢・不妊手術を行えば、島内の生態系が崩れ、ネズミが増えてしまう。このような懸念がある。

 

 「球美にゃんこ亭」のある付近は、観光客の宿泊施設や飲食店が多数ある。「外ネコ」がネズミを駆除することで、宿泊施設や飲食店を経営する住民はいくらか助かっていたのだろう。

 

【参考:マンガで学ぶ動物倫理】

 

 A氏によれば、「TNTA」に力点を置きながら町内の生態系に配慮した「地域猫活動」を実施しなけれならない。

 

 以前、島内に存在していたと推定される1,000匹から2,000匹の範囲内で、去勢・不妊手術を施していない「外ネコ」を残しながら、「地域猫活動」を実施していきたいとA氏は語った。

 

 また、すでに確立されている猫と人の生態系の中でネコの頭数は最終的に模索すべきである。ただし活動自体が始まったばかりなので、まずは増加傾向を食い止め、以前のような頭数をどうキープするかが当面の課題のようである。

 

 この話から考えると、「去勢・不妊手術はよいことである」と単純に言い切れない。人と人以外の動物も含む島全体の「持続可能な暮らし」を目指すためには、このようなバランスも必要である。

 

 保護猫/地域猫活動の拠点として「球美にゃんこ亭」は、猫の保護活動を通して久米島町の自然を守ることを目指す。その中で島内の多くの猫たちが不幸にならず、島内の人たちと共存できるかを模索しながら活動している。

 

■ 感想

 以上、保護護猫カフェ「球美にゃんこ亭」を通して離島特有の現状と課題についてまとめた。

 

 沖縄本島とは違う離島特有の悩みや課題など具体的に活動している方から話を聞くことで、これまで「動物倫理学」や「地域猫活動」の学習や実践から学んできたことを見直す機会をもらったことは大きい。

 

 オープン初日にも関わらず、快く色々な質問に答えて頂いたKさんとAさんに改めて感謝申し上げます。

 

 この記事を通して、地元のみならず多くの方々に保護猫/地域猫活動に関心を持って頂けたら幸いである。【終わり】

 

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球美にゃんこ亭(一般社団法人 にゃんこ亭) 
〒901‐3108 沖縄県島尻郡久米島町字比嘉160-42
14:30~18:30(不定休)

HP:https://nyankotei.jp/

instagram: kume_nyanko

Twitter@Kumeis_cat

Facebookhttps://www.facebook.com/pg/kumejimadogandcat/posts/

一般社団法人にゃんこ亭: amazon.jp/hz/wishlist/ls

 

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↓動物倫理学について以下も参考↓

www.youtube.com