ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#12】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第12回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

The standard case for unfettered markets rests on two claims one about the welfare, the other about freedom. First markets promote the welfare of society as a whole by providing incentives for people to work hard supplying the goods that other people want. (In common parlance, we often equate welfare with economic prosperity, though welfare is a broader concept that can include  noneconomic aspects or social well-being.) Second, markets respect individual freedom; rather than impose a certain value on goods and services, markets let people choose for themselves what value to place on the things they exchange.

 

■単語と文法事項の確認

・case:立場 

・unfettered:足かせがない 

・rest:置かれている

・as a whole:全体として 

・incentive:動機 

・parlance:言い方 

・equate:同等と見なす 

・prosperity:成功・繁栄 

・broad:広い 

・impose A on B:AをBに課す 

・place on:置く・かける 

 

■私訳

非制限的市場の標準的な立場は、一方で幸福についてもう一方で自由に基づいている。第1に、他人が欲しがる商品を供給するため人々に動機づけをもたらすことによって市場は社会全体に幸福を促進する。(幸福が非経済的側面や社会的福利を含むことができるより広い概念であるけれども、日常語では幸福を経済的成功と同じようにみなしがちである。)第2に、市場は個人を尊重する。すなわち、ある価値を商品やサービスに課すよりむしろ、取引する対象にどんな価値を置くのかを市場は人々に選択を委ねている。

 

■本書の訳

非制限的市場を擁護する標準的な議論は2つの主張に基づいている。1つは幸福に関する主張、もう1つは自由に関する主張だ。第一に、市場は社会全体の幸福を増大させる。他人が欲しがる品物を供給するべく努力する動機づけを人々にもたらすからだ(幸福とは社会的福利の非経済的面を含んだより広い概念であるが、日常語では、われれわれは降伏と経済的繁栄を同一視する傾向がある)。第二に市場は個人の自由を尊重する。商品やサービスに特定の価値を押しつけるのではなく、取引の対象にいくらの値をつけるかは各人の選択にまかせるのである。 (p.16)

 

■私訳と本書の訳の比較

 本書では「自由市場擁護論」が2つ登場する。

(1) 福利増大説:自由市場は社会全体の幸福を増すので支持する

(2) 自由尊重説:自由市場は個人の自由を尊重するので支持する

 

しかし、この2つの説から次の反論が登場する。

(1) 福利増大説に対して:「禁止法」は社会全体の福利を増大させないので支持しない

(2) 自由尊重説に対して:「禁止法」は個人の自由に介入するので支持しない

 

 以下、(1)と(2)への反論がそれぞれ提示される。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】