ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#13】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第13回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Not surprisingly,the opponent of prince-gouging laws invoke these two familiar arguments for a free market. How do defenders of price gouging laws respond ? First, they argue that the welfare of society as a whole is not really reserved by the exorbitant prices charged in hard times. Even if high prices call forth a greater supply of goods, this benefit has to be weighed against the burden such price impose on those last able to afford them. For the affluent, paying inflated prices for a gallon of gas or motel room in a storm may be an annoyance; but for those of modest means, such prices pose a genuine hardship,one that might lead them to stay in harm's way rather than flee to safety.Proponents of price-gouging laws argue that any estimate of the general welfare must include the pain and suffering of those who may be priced out of basic necessities during an emergency. 

 

■単語と文法事項の確認

・opponent:反対者 

invoke:訴える 

・respond:応答する 

・reserve:保有する 

・exorbitant:法外な 

・in hard times:困ったとき 

・call forth:呼び出す 

・weigh A against B:AをBと比較衡量する 

・burden:負担 

・impose:課す 

・afford:与える 

・affluent:豊かな 

・annoyance:イライラさせること 

・pose:引き起こす 

・genuine:本当の 

・hardship:苦難 

・in harm's way:危険なところ 

・flee:逃げる 

・proponent:擁護者 

・estimate:評価・判断 

・include:算入する 

・priced out:締め出す 

 

■私訳

当然であるが、法外値上げ法の反対者は自由市場のためのこれら2つの同様の議論に訴える。法外値上げ法の擁護者はどう応答するのか。第1に、社会全体の幸福は困ったときに法外な価格の請求によって担保されないと彼らは主張する。高価格が商品の供給の増加を呼び出すとしても、その利益はその価格でモノを買う力が乏しい人に課された負担を比較衡量しなければならない。富裕層にとって、嵐の中で部屋代や1ガロンのガスの高騰価格を支払うことはイライラさせることかもしれない。すなわち、そのような価格は、資力が乏しい人々にとって、本当の苦難、つまり安全なところに逃げることよりも危険な場所に留まらせることになる。全体の幸福の評価は緊急時に基本的必要を締め出すことになる人々の痛みや苦しみを算入しなければならないと、法外な値上げ法の擁護者は主張する。

 

■本書の訳

当然ながら、便乗値上げ禁止法反対者は、よく知られたこれら2つの自由市場擁護論を持ち出す。これに対して、便乗値上げ禁止法支持者はどう反論するか。第一に、困っているときに請求される法外な値段は社会全体の幸福に資するわけではないと彼らを主張する。高い価格のおかげで商品の供給が増えるというメリットがあるとしても、その価格に対応する視力が最も弱い人々への負担も考量されねばされねばならない。富裕層にとって、嵐のさなかに高騰したガソリン代やモーテル代を支払うことは不快なことかもしれない。だが、つましい暮らしを送る人々にとっては、こうした価格の真の困苦を強いるものだ。彼らは安全を求めて逃げるより、危険な所にとどまるかもしれない。社会全体の計量に際しては、不当な高値のために緊急時に基本的必要を満たせなくなるかもしれない人の痛みや苦しみを考量しなければならない。このように便乗値上げ禁止法支持者を論じる。 (p.18)

 

■私訳と本書の訳の比較

 いくつか表現の違いはあるが、私訳と本書の訳に大きなズレはないだろう。

 

 自然災害の中で、経済格差の影響は大きく出てくる。洪水被害に遭われた方の中で、自宅に留まる人々のニュースを見ることもある。「自宅に愛着があるから」という理由で留まる人々もいる一方、本書で「便乗値上げ禁止法支持者」が主張するように「経済的理由で自宅に留まらざるを得ない」人々もいることが想像に至らなかったことに気付いた。

 

 自然災害などの緊急事態が、倫理的葛藤や課題について考えるひとつの機会を与えてくれる。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】