ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#18】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第18回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Greed is vice, a bad way of being, especially when it makes people oblivious to the suffering of others. More than a personal vice, it is at odds with 
civic virtue. In time of trouble, a good to society pulls together. Rather than press for maximum advantage, people look out for one another. A society in which people exploit their neighbors or financial gain in times of crisis is not a good society. Excessive greed is therefore a vice that a good society should discourage if it can. Price-gouging low cannot banish greed, but they can at least restrain its most brazen expression, and signal society's disapproval of it. By parnishing greedy behavior rather than rewarding it, society affirms the civic virtue of shared sacrifice for the common good.  

 

■単語と文法事項の確認

・oblivious:気にかけない 

・is at odds with A:Aに反する 

・pull together:協力する 

・press:重圧 

・look out for:気を配る 

・exploit:利用する 

・financial:金融上の 

・excessive:度を超した 

・discourage:妨げる 

・banish:追放する 

・restrain:抑制する 

・brazen:恥知らずの 

・signal:証拠となる 

・disapproval:不賛成 

・reward:報いる 

・affirm:支持する 

 

■私訳

苦しんでいる人を気にかけないとき、強欲は悪徳、すなわち悪いあり方になる。個人の悪徳以上に、それは公共の徳に反する。困難の時期に、よい社会は協力する。利益の最大化の圧力以上に、人々は他人に気を配る。危機的な時期に隣人や金融上の利益を人々が利用する社会はよい社会ではない。それで強欲は可能であればよい社会が妨げるべき悪徳である。便乗値上げ法は強欲を追放できないが、少なくとももっとも恥知らずの発想を抑制することになるし、そしてその社会の不承認の証拠となり得る。褒賞するより強欲な振舞を罰することによって、社会が共通善の共有された犠牲の市民的徳を支持することになる。

 

■本書の訳

強欲は悪徳、つまり悪しき生き方である。そのせいで他人の苦しみが目に入らなくなる場合は特にそうだ。強欲は一身上の悪徳にとどまらない。それは公徳に反するのだ。良い社会は困難な時期に団結するものだ。人々は利益を最大化するのではなく、たがいに気を配りあう。危機に際して人々が隣人を食い物にして金儲けするような社会は良い社会とは言えない。したがって、行き過ぎた強欲は、可能ならば社会が押さえ込むべき悪徳なのだ。便乗値上げ禁止法によって強欲を消し去ることはできないが、臆面もない強欲行為は少なくとも防ぐことができるし、社会がそれを是認していないことは示せる。強欲なふるまいに報奨でなく罰を与えることで、社会は、公益のために犠牲を分かち合う公徳を支持することになるのだ。 (p.23)

 

■私訳と本書の訳の比較

「強欲」(greed)は「公徳」(civic virtue)にも反する。「行き過ぎた強欲」(civic virtue)は「社会が抑え込むべき悪徳」(a vice that a good society should discourage)である。この根拠を基に、「強欲なふるまい」(greedy behavior)に社会は「罰を与えること」(parnishing)を支持できる。

 

 しかし、この議論は暴論かもしれない。次の段落でサンデルは、どう展開するのか。気になりながら読み進める。【続く】

 

【次の記事】

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【参考文献】