はじめに
入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第3回である。
【前回の記事】
引き続き、最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。
[内容]
■原文
■単語と文法事項の確認
■私訳
■本書の訳
■私訳と本書の訳の比較
■原文
Many Floridians were angered by the inflated prices."After Storm Come the Vultures," read a headline in USA Today.One resident, told it would cost $10,500 to remove a fallen tree from his roof, said it was wrong for people to "try to capitalize on other people's hardship and misery". Charlie Crist,the state's attony general, agreed:"It is astounding to me, the level of greed that someone must have in their soul to be willing to take advantage of someone suffering in the wake of a hurricane".
■単語と文法事項の確認
・inflate:高騰する
・Vultures:ハゲタカ
・headline:見出し
・resident:住民
・capitalize on A:Aにつけ込む
・hardship:困難
・misery:不幸
・attony general:司法長官
・astound:驚く
・greed:貪欲さ
・be willing to do:~しても構わない
・take advantage of A:Aを利用する
・in the wake of A:Aの後に
■私訳
フロリダの多くの人々が高騰した物価に怒った。「嵐の後にハゲタカがやって来る」という『USAトゥデイ』に書いてあった。ある住民は倒れた木を自分の屋根から取り除くために10,500ドルかかると言われ、「他人の困難や不幸につけ込もうとする」人々はよこしまであると語った。州の司法長官であるチャーリー・クリストは、「ハリケーンの後に被害を被っている人々を利用して構わないという精神を持つことは驚きである」という点に同意する。
■本書の訳
多くのフロリダ住民が物価の高騰に怒った。『USAトゥディ』紙には「嵐去りハゲタカ襲来」の見出しが躍った。ある住民は屋根から気を一本降ろす作業の料金が1万500ドルだと言われ、「人の苦境や不幸に付けこもうとする」連中はよこしまだと語った。フロリダ州司法長官チャーリー・クリストも同意見で、「ハリケーンの後で困っている人を利用しても構わないと思える輩の内なる欲の力の深さには呆れ返るばかりだ」と述べた。 (p.7)
■私訳と本書の訳の比較
「私訳」と本書の訳を比較して、単語選びで生々しさを表現できることに気付いた。例えば、”read"を私は辞書的に「書いてあった」と訳したのに対して、本書では「躍った」と訳している。また”astound”を私は「驚きである」と訳したのに対して、本書では「呆れかえる」と訳している。訳し方で、サンデルの立ち位置や本に登場する人物の感情を実況できることに翻訳の面白さを感じた。【続く】
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【参考文献】