ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#9】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第9回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

 Attorney General Crist (a Republican who would later be elected governor of Florida) published an-ed piece in the Tampa paper defending the law against price gouging:" In times of emergency, government cannot remain on the sidelines  while people are charged unconscionable prices as they flee for their lives or seek the basic commodities for their families after hurricane. Chris rejected the notion that these "unconscionable" prices reflected a truly free exchange:  

 

This is not the normal free market situation where willing buyers freely elect to enter into the marketplace and meet willing sellers, where a price is agreed upon based on supply and demand in an emergency, buyers under duress have no freedom. Their purchase of necessities like safe lodging are forced. 

 

■単語と文法事項の確認

・remain:○○のままである。 

・on the sidelines:傍観して 

・unconscionable:桁外れの 

・flee:非難する 

・commodity:必需品 

・elect to:○○を決定する 

・duress:強制 

・purchase:購入 

・lodging:宿 

 

■私訳

 クリスト司法長官(共和党員で後にフロリダ州知事に選出された)は『タンバ』紙の論説コラムで法外値上げに対抗する法律を擁護論を次のように発表した。「緊急事態の際に、ハリケーン後に自らの家族のため生活のため非難し生活必需品を探すとき、 人々が桁外れの価格を請求されている一方で、政府は傍観しているままにはできない。クリスはこれら「桁外れの」価格が本当に自由な取引を反映する意見を拒否した。 

 

 これは自発的な買い手が市場の中に入ることを選択し自発的な売り手と出会うという自由市場の状況ではなく、ある価格は緊急急事態での需要と供給に応じ、強制下での売り手は自由ではない。これら安全な宿泊所のような必要な購入は強いられたものである。 

 

■本書の訳

 先のクリスト司法長官(共和党員で後のフロリダ州知事)は『タンバ・トリビューン』紙上の論説コラムで、便乗値上げ禁止法擁護論を展開した。「緊急事態において、良心にもとるような請求がなされているのを政府は傍観するわけにはいかない。人々は命からがら避難し、ハリケーン後の状況で家族のために生活必需品をなんとか手に入れようとしているのだ。」クリストはこうした「良心にもとる」価格は真に自由な取引に基づいてはいないのだと主張する。彼は次のように言う。 

 

 これは正常な自由市場の状況ではない。自発的にものを買おうとする買い手が市場に出かけていって自発的な売り手に出会い、そこで受給に応じて価格に合意が下されるという状況ではない。緊急事態では、切羽詰った買い手に自由はない。安全な宿泊所を借りるといった必要不可欠な買い物は強いられたものだ。 (p.12)

 

■私訳と本書の訳の比較

 ここで登場する、クリスト司法長官は緊急事態下での「便乗値上げ」に反対の立場を採る。「ハリケーン後の状況」では、「良心にもとる」価格は真に自由な取引に基づいてはいない。すなわち緊急事態下では、「見えざる手」による「価格機構」は機能していないと、クリスト司法長官は言いたいのだろう。ハリケーンのような緊急事態下では、「買い手に自由はない」。この状況下で、政府は単に「傍観」してはいけない。

 

 この内容が私訳で訳出できていれば、本書の訳とは大きなズレはないだろう。今後サンデルがどうコメントするのか、楽しみになってきた。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】