ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#5】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第5回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

 But even as Crist set about enforcing the price-gouging law, some economists argued that the law- and the public outrage- were misconceived. In medieval times, philosophers and theologians believed that the exchange of goods should be governed by a "just price", determined by tradition or the intrinsic value of things. But in market societies, that economists observed, prices are set by supply and demand. There is no such things as a "just price".  

 

■単語と文法事項の確認

・set about A:Aに取りかかる 

・enforce:○○を守らせる 

・outrage:激怒 

・misconceive:誤解する 

・medieval times:中世 

・theologian:神学者 

・govern:左右する・決定する 

・determin:判断する 

・intrinsic:固有の・本質的な

 

■私訳

 クリストが法外な値段を禁止する法律に取りかかるときでさえ、経済学者の中にはその法律-そして市民の怒りにも-誤解があると論じた。中世では、哲学者や神学者が商品の交換は「公正な価格」によって決定されるべきだし、伝統やモノ本来の価値によって判断されるべきである信じていた。しかし市場社会で、経済学者が見るところでは、価格は需要と供給によって設定される。「公正な価格」などは存在しない。 

 

■本書の訳

 ところが、プリストが便乗値上げ禁止法を執行した時でさえ、一部の経済学者はその法律にはーそして一般市民の怒りにも-誤解があると論じた。中世の哲学者や神学者は、ものの売買は伝統や商品本来の価値で決まる「公正な価格」に基づいてなされるべきだと信じていたが、経済学者たちの見るところでは、市場社会では価格は需要と供給によって決まるので、「公正な価格」などというものは存在しない。(p.8) 

 

■私訳と本書の訳の比較

 細かな表現の違いはあれ、今回の訳出の方向性はお互いほぼ同じだろう。中世の哲学者や神学者と、現代の経済学者の「価格」の捉え方の違いに乖離がある。この点を興味深く感じながら、訳出できた。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】