ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#6】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第6回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

 Thomas Sowell, a free market economist, called price gouging an "emotionally powerful but economically meaningless expression that most economists pay no attention to, because it seems too confused to bother with". Writing in the Tampa Tribune, Sowell sought to explain "how 'price gouging' helps Floridans". Charges of price gouging arises "when prices are significantly higher than what people have been used to", Sowell wrote. But "the price levels that you happen to be used to" are not morally sacrosanct. They are no more "special or 'fair' than other prices" that market conditions -including those prompted by hurricane- may bring about.  

 

■単語と文法事項の確認

・bother:困惑する 

・seek to do:○○しようとする 

・charge:非難 

・be used to:○○に慣れる 

・sacrosanct:神聖不可侵な 

・prompt:誘発する 

 

■私訳

 自由市場経済学者である、ト-マス・ソーウェルは法外な値上げを「支離滅裂で困惑するように思えないので、感情的に力はあるがほとんどの経済学者が注意を払わない経済的に意味のない表現」と呼んだ。『タンバ・トリビューン』紙で、ソーウェルは「『法外な値上げ』でフロリダ住民がどれほど助かったか」を説明しようとした。法外な値上げへの非難は「これまで慣れていたものより遥かに高い価格のとき」起こる、とソーウェルは述べる。しかし「たまたま慣れていた価格の水準は道徳的に神聖不可侵ではない。それらは「ハリケーンによって引き起こされた市場の状況も含んだ価格ほど特別でもないし『公平』でもない」。

 

■本書の訳

 自由市場を支持する経済学者のトーマス・ソーウェルは、便乗値上げというのは「感情には強く訴えるかもしれないが、経済学的には無意味で、ほとんどの経済学者が何の注意も払わないような表現だ。でたらめすぎるので苦にすることなどできないように思えるのだ。」と述べた。ソーウェルは「『タンバ・トリビューン』紙上で「『便乗値上げ』のおかげでフロリダ住民がどれほど助かるか」を説明しようとした。便乗値上げの訴えが起こるのは「慣れた水準に比して価格がかなり高い場合」である。しかし「人がたまたま慣れていた価格水準」は道徳的に神聖不可侵であるわけではない。その価格は市場の条件がもたらす「ほかの価格と比べて特別でもないし『公正』でもない」のだ。ハリケーンの影響もそういう条件の1つだ。ソーウェルはこのように説明した。 (p.9)

 

■私訳と本書の訳の比較

 本段落が、本書で登場する「経済学者のトーマス・ソーウェル」の主張であることを明確にするため、最後の行に「ソーウェルはこのように説明した」と本書の訳では付されている。

 

 筆者の主張なのかそれ以外の人物の主張なのかを意識して書き分けることは、文章を書くときに基本的なこととなる。この点を意識して、読者が迷わないよう言葉を補いながら本書は訳出していることに気付いた。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】