ネコと倫理学

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【第2回】道徳法則について-二十規制的構造と「意志」の観点からー|「定言命法」根本法式の二十規制的構造【カント道徳哲学】

 

1.定言命法」根本法式の二十規制的構造

 

 「定言命法」の根本法式について考察する場合、この「命法」には、二十規制的構造が存在するという解釈がある。

 

 二十規制的構造とは、簡単に言うと、ある理性的存在者の格率が普遍的法則となることを「思惟することができ」また「意欲することができる」という二十構造を「定言命法」の根本法式は採用している、という解釈である。

 

 つまり、「定言命法」の根本方式で、格率が普遍的法則となるためには、そのように「思惟することができ」、また「意欲することができ」なければならない。

 

 このような立場を採る人物に、井上義彦がいる。井上は、「定言命法」の根本法式には2つの判定基準がある、ということを認める。

 

 第1の判定基準は、われわれの格率が普遍的法則になり得るかどうか、という判定基準である。この判定基準では、格率が普遍的法則足りうるという、合法則性が問題になる。

 

 第2の判定基準は、われわれの格率が普遍的法則足りうることを同時に意欲することができるかどうか、という判定基準である。この判定基準では、格率を普遍的法則として意欲することができる、ということが問題となる。

 

 以上、「定言命法」の根本法式の二十規制的構造という解釈について確認した。

 

 さて、『実践理性批判』での純粋実践理性の根本法則にも「定言命法」の根本法式と同様に、二十規制的構造が存在するのであろうか。もしも「定言命法」の根本法式と同様に、純粋実践理性の根本法則にも二十規制的構造が存在することを示すことができるのならば、両者は同一の道徳法則であるということを示したことになる。

 

 そのため、純粋実践理性の根本法則、すなわち「汝の意志の格率が普遍的法則として妥当するように行為せよ」の中に出てくる「意志」という概念に着目し更に考察を進めていく。【続く】

 

<参考文献>

井上義彦,1989:カント「定言命法」のニ重規制的構造(倫理学の基本問題(九州大学哲学会創立25周年記念)、九州大学哲学会編、『哲学論文集』所収、九州大学哲学会.).https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1398237/025_p143.pdf