ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

【私訳#19】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第19回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

To acknowledge the moral force of the virtue arguments is not to insist that it must always prevail over competing considerations. You might conclude, in some instances, that a hurricane-stricken community should make a devil's bargain – allow price gouging in hopes of attracting an army of roofers and contractors from far and wide, even at the moral cost of sanctioning greed. Repair the roofs now and the social fabric later. What's important to notice, however, is that the debate about price-gauging laws is not simply about welfare and freedom. It is also about virtue - about cultivating the attitude and dispositions, the qualities of character, on which a good society depends. 

 

■単語と文法事項の確認

・acknowledge:認めること 

・insist:要求する 

・prevail:優先する 

・considerations:問題点 

・conclude:結論を下す

・in some instances:例えば 

・bargain:契約 

・in hopes of A:Aに期待して 

・attract:引きつける 

・an army of A:大勢のA 

・contractor:建設業者 

・sanction:是認する 

・greed:貪欲 

・fabric:構造 

・notice:注意 

・cultivate:陶冶する 

・disposition:気質 

・quality:質 

 

■私訳

美徳論の道徳的な力を認めることは、それが競合する問題点に対していつも優先することを要求するわけではない。例えば、ハリケーン被害に遭った共同体はー強欲さを是認する道徳的コストでさえ、広く遠くから大勢の屋根職人や建設業者を引きつけることを期待して価格の値上げを許容するというー悪魔の契約をするべきであると決断を下すかもしれない。今は屋根を直し社会構造は後である。しかしながら、注意すべき重要なことは、法外な値上げ法についての議論は単に幸福で自由に関することではないということである。それは美徳、すなわちよい社会に依存した気質、つまり性格の質や態度を陶冶することに関わる。 

 

■本書の訳

美徳論が道徳に及ぼす力を認めると言っても、それが競合する議論に対してつねに優先されねばならないと言っているのではない。たとえば、ハリケーンに襲われたコミュニティは悪魔の取引を結ぶべきだという判断が下される場合もあるだろうー強欲を受容する道徳面とコストを支払ってでも、広く各地から屋根職人や建設業者が押し寄せるのを期待して、便乗値上げを受け入れるべきだという判断だ。まずは屋根の修理をやってしまって、社会機構はその後の話だ。とはいえ、押さえておくべき大切なことは、便乗値上げ禁止法をめぐる議論は単に幸福と自由に関わるわけではないという点だ。それは美徳についてのー心構えや気質、つまり性格を陶冶することについてのー議論でもある。よい社会は美徳を土台としているのだ。 (p.24)

 

■私訳と本書の訳の比較

【私訳#11】で確認したように、「便乗値上げ禁止法」(price-gauging laws)の議論は、①幸福の最大化②自由の尊重③美徳の促進を中心に展開される。

 

【参考:過去記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 「美徳論」(the virtue arguments)は、常に優先されるとは限らない。しかし、「便乗値上げ禁止法」をめぐる議論は単に上記の①と②だけではない、とサンデルは主張する。今回は美徳に関する議論でもある。【続く】

 

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 

【参考文献】

 

 

【私訳#18】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第18回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Greed is vice, a bad way of being, especially when it makes people oblivious to the suffering of others. More than a personal vice, it is at odds with 
civic virtue. In time of trouble, a good to society pulls together. Rather than press for maximum advantage, people look out for one another. A society in which people exploit their neighbors or financial gain in times of crisis is not a good society. Excessive greed is therefore a vice that a good society should discourage if it can. Price-gouging low cannot banish greed, but they can at least restrain its most brazen expression, and signal society's disapproval of it. By parnishing greedy behavior rather than rewarding it, society affirms the civic virtue of shared sacrifice for the common good.  

 

■単語と文法事項の確認

・oblivious:気にかけない 

・is at odds with A:Aに反する 

・pull together:協力する 

・press:重圧 

・look out for:気を配る 

・exploit:利用する 

・financial:金融上の 

・excessive:度を超した 

・discourage:妨げる 

・banish:追放する 

・restrain:抑制する 

・brazen:恥知らずの 

・signal:証拠となる 

・disapproval:不賛成 

・reward:報いる 

・affirm:支持する 

 

■私訳

苦しんでいる人を気にかけないとき、強欲は悪徳、すなわち悪いあり方になる。個人の悪徳以上に、それは公共の徳に反する。困難の時期に、よい社会は協力する。利益の最大化の圧力以上に、人々は他人に気を配る。危機的な時期に隣人や金融上の利益を人々が利用する社会はよい社会ではない。それで強欲は可能であればよい社会が妨げるべき悪徳である。便乗値上げ法は強欲を追放できないが、少なくとももっとも恥知らずの発想を抑制することになるし、そしてその社会の不承認の証拠となり得る。褒賞するより強欲な振舞を罰することによって、社会が共通善の共有された犠牲の市民的徳を支持することになる。

 

■本書の訳

強欲は悪徳、つまり悪しき生き方である。そのせいで他人の苦しみが目に入らなくなる場合は特にそうだ。強欲は一身上の悪徳にとどまらない。それは公徳に反するのだ。良い社会は困難な時期に団結するものだ。人々は利益を最大化するのではなく、たがいに気を配りあう。危機に際して人々が隣人を食い物にして金儲けするような社会は良い社会とは言えない。したがって、行き過ぎた強欲は、可能ならば社会が押さえ込むべき悪徳なのだ。便乗値上げ禁止法によって強欲を消し去ることはできないが、臆面もない強欲行為は少なくとも防ぐことができるし、社会がそれを是認していないことは示せる。強欲なふるまいに報奨でなく罰を与えることで、社会は、公益のために犠牲を分かち合う公徳を支持することになるのだ。 (p.23)

 

■私訳と本書の訳の比較

「強欲」(greed)は「公徳」(civic virtue)にも反する。「行き過ぎた強欲」(civic virtue)は「社会が抑え込むべき悪徳」(a vice that a good society should discourage)である。この根拠を基に、「強欲なふるまい」(greedy behavior)に社会は「罰を与えること」(parnishing)を支持できる。

 

 しかし、この議論は暴論かもしれない。次の段落でサンデルは、どう展開するのか。気になりながら読み進める。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】

 

 

【私訳#17】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第17回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Christ touched on the moral source of the outrage when he described the "greed that someone must have in their soul to be willing to take advantage of someone suffering in the wake of a hurricane". He did not explicitly connect this observation to price-gouging laws. But implicit in his comment is something like the following argument, which might be called the virtue argument: 

 

■単語と文法事項の確認

・greed:欲張り 

・take advantage:利用する 

・in the wake of A:Aのすぐ後で 

・explicitly:明らかに 

・observation:意見・見解 

・implicit:含まれた 

 

■私訳

「ある人物がハリケーンのすぐ後で被った人を利用しようとする気持ちを持つ」欲深さを説明するとき、クリストは憤りという道徳の源泉について触れた。彼は法外な値上げ法へのこの見解に明らかに結びつけているわけではない。しかし次のような議論は彼のコメントの中で暗に含まれていて、それは美徳論と呼ばれるものであろう。 

 

■本書の訳

クリストが「ハリケーンの後で困ってる人を利用しても構わないと思える輩の内なる欲深さには呆れ返るばかりだ」と述べたとき、彼はこうした憤りの道徳的源泉を論じていたのだ。クリストは自分の所見を便乗値上げ禁止法にはっきりと結びつけたわけではない。だが、彼のコメントには、美徳論と呼んでいいような議論が暗に含まれている。それは次のようなものである。 (p.22)

 

■私訳と本書の訳の比較

 「憤りの道徳的源泉」(the moral source of the outrage)は、理性的な怒りであることが【私訳#16】から理解できる。それは、「美徳論」( the virtue argument)と考えてもよい。【続く】

 

【次の記事】

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【参考文献】

 

 

 

【私訳#16】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第16回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

But the outrage at price-gougers is more than mindless anger. It gestures at a moral argument worth taking seriously. Outrage is a special kind of anger you feel when you believe that people are getting things they don't deserve. Outrage of this kind is anger at injustice.

 

■単語と文法事項の確認

・mindless:思慮に欠ける 

・gesture:身振りで示す 

・deserve:値する

 

■私訳

しかし法外な値上げへの憤りは思慮に欠ける怒り以上のものである。それは真剣に行うに値する道徳的議論である。人々が値しないものを得ていると思っているとき、憤りは一種の特別な怒りである。この種の憤りは不正義の怒りである。 

 

■本書の訳

とはいえ、便乗値上げに対する憤りは考えなしの怒りにとどまらない。そこには、真剣な検討に値する道徳的議論が現れている。憤りとは特別な種類の怒りであり、誰かが何かを不当に手にしていると思うときに生じる。この種の憤りは不正義に対する怒りなのだ。(p.20ーpp.21)

 

■私訳と本書の訳の比較

 直訳を意識すると、ぎこちない文章になってしまう。本書は、サンデルの意図を汲み取った訳であることを改めて感じた。

 

 さて、サンデルは「憤り」(outrage)を「不正義に対する怒り」(anger at injustice)と定義している。この感情は、理性から来る感情と理解していいのだろう。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】

 

 

【私訳#15】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第15回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

 But we also need to consider one further argument. Much public support for price-gouging laws comes from something more visceral than welfare or freedom. People are outraged at "vultures" who prey on the desperation of others and want them punished-not rewarded with windfall profits. Such sentiments are often dismissed as atavistic emotions that should not interfere with public policy or laws. As Jacobi writes "demonizing vendors won't speed Florida's recovery. 

 

■単語と文法事項の確認

・public:市民 

・visceral:直観的な 

・outraged:憤慨させる 

・vultures:ハゲタカ 

・desperation:自暴自棄 

・punish:罰する 

・rewarded:報い 

・windfall:棚ぼた 

・dismiss:片付ける 

・demonize:悪者扱いする 

・vendor:物売り 

 

■私訳

しかし更に進んだある議論を考える必要がある。多くの市民が法外値上げ法を支持することは幸福や自由をより直観的ものに由来する。人々は他人のイラつきを祈ったり棚ぼたの利益ではない罰を欲したりする。そのような感情は社会政策や法に干渉すべきではないという原始的な感情として片付けられることが多い。ジャコビーが述べるように、「悪者扱いされた売り手によってフロリダの復興が早まるわけではない。」 

 

■本書の訳

だが、さらにもう1つ考慮すべき(禁止法擁護論の)理屈がある。多くの一般市民を便乗値上げ禁止法支持に導くのは、幸福や自由より直観的な何かである。人々は他人の窮状を食い物にする「ハゲタカ」に憤慨し、ハゲタカに棚ぼたの利益ではなく、罰を与えたいと欲する。こうした心情は、社会政策を法律に反映すべきではない現実的な感情として片付けられることが多い。ジャコビーが述べるように、「売り手を悪者扱いにしてもフロリダの不幸が早まるわけじゃない」ということだ。 (p.20)

 

■私訳と本書の訳の比較

「便乗値上げ法」(price-gouging laws)を本段落では、「ハゲタカ」(vulutures)と表現している。「便乗値上げ法」は「他人の窮状を食い物にする」法律である。「便乗値上げ法」への心情は、「原始的な感情」(atavistic emotions)である。そういう感情を抱いたとしても、フロリダの復興が早まるわけではない。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】

 

 

【私訳#14】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第14回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Second, defenders of price-gouging laws maintain that,under certain conditions,the free market is not truly free. As Crist points out,"buyers under duress have no freedom. Their purchase of necessities like safe lodging are forced." If you're fleeing a hurricane with your family, the exorbitant price you pay for gas or shelter is not really a voluntary exchange.It's something closer to extortion. So to decide whether price-gouging laws are justified, we need to assess these competing accounts of welfare and of freedom. 

 

■単語と文法事項の確認

・duress:脅迫 

・lodging:宿 

・extortion:強要 

・compete:対立する 

 

■私訳

第2に、法外値上げ法の擁護者は、ある状況下で、自由市場は本当に自由ではない。クリストが指摘するように、「緊迫下での買い手には自由はない。安全な宿泊所のような必需品の購入は強いられたものである。」もし家族と共にハリケーンから逃げているのであれば、ガソリンや避難所に支払う法外な価格は真に自発的な取引ではない。それは強要に近い何かである。それで法外値上げ法が正義に適っているかどうかを決定することは、幸福と自由に関してこれらの対立を評価する必要がある。

 

■本書の訳

第二に、特定の状況下では、自由市場は真に自由なわけではないと禁止法支持者は主張する。クリストが指摘するように「せっぱ詰まった買い手に自由はない。安全な宿泊所を借りるといった必要不可欠な買い物を強いられたものだ。」一家でハリケーンから避難している際に法外なガソリン代や宿泊費を支払うのは自発的な取引ではない。それは強要に近い何かである。このように便乗値上げ禁止法が正義にかなっているかどうかを決めるには、幸福と自由に関する、これらの対立する2つの立場からの説明[にどれほどの説得力があるのか]を評価する必要があるのだ。 (p.18ーpp.19)

 

■私訳と本書の訳の比較

 "defenders of price-gouging laws"を「法外値上げ法の擁護者」と訳したが、適訳がどうか気になった。

 

 確かに自然災害などの「特定の状況下」では、「必要不可欠な買い物」は自由な取引ではなく「強要」となる。

 

 「便乗値上げ禁止法」が正義にかなっているかどうかの判断するため、幸福と自由に関して対立する2つの立場からの説明の評価が必要である。サンデルはこのように評する。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】

 

 

【私訳#13】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第13回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

Not surprisingly,the opponent of prince-gouging laws invoke these two familiar arguments for a free market. How do defenders of price gouging laws respond ? First, they argue that the welfare of society as a whole is not really reserved by the exorbitant prices charged in hard times. Even if high prices call forth a greater supply of goods, this benefit has to be weighed against the burden such price impose on those last able to afford them. For the affluent, paying inflated prices for a gallon of gas or motel room in a storm may be an annoyance; but for those of modest means, such prices pose a genuine hardship,one that might lead them to stay in harm's way rather than flee to safety.Proponents of price-gouging laws argue that any estimate of the general welfare must include the pain and suffering of those who may be priced out of basic necessities during an emergency. 

 

■単語と文法事項の確認

・opponent:反対者 

invoke:訴える 

・respond:応答する 

・reserve:保有する 

・exorbitant:法外な 

・in hard times:困ったとき 

・call forth:呼び出す 

・weigh A against B:AをBと比較衡量する 

・burden:負担 

・impose:課す 

・afford:与える 

・affluent:豊かな 

・annoyance:イライラさせること 

・pose:引き起こす 

・genuine:本当の 

・hardship:苦難 

・in harm's way:危険なところ 

・flee:逃げる 

・proponent:擁護者 

・estimate:評価・判断 

・include:算入する 

・priced out:締め出す 

 

■私訳

当然であるが、法外値上げ法の反対者は自由市場のためのこれら2つの同様の議論に訴える。法外値上げ法の擁護者はどう応答するのか。第1に、社会全体の幸福は困ったときに法外な価格の請求によって担保されないと彼らは主張する。高価格が商品の供給の増加を呼び出すとしても、その利益はその価格でモノを買う力が乏しい人に課された負担を比較衡量しなければならない。富裕層にとって、嵐の中で部屋代や1ガロンのガスの高騰価格を支払うことはイライラさせることかもしれない。すなわち、そのような価格は、資力が乏しい人々にとって、本当の苦難、つまり安全なところに逃げることよりも危険な場所に留まらせることになる。全体の幸福の評価は緊急時に基本的必要を締め出すことになる人々の痛みや苦しみを算入しなければならないと、法外な値上げ法の擁護者は主張する。

 

■本書の訳

当然ながら、便乗値上げ禁止法反対者は、よく知られたこれら2つの自由市場擁護論を持ち出す。これに対して、便乗値上げ禁止法支持者はどう反論するか。第一に、困っているときに請求される法外な値段は社会全体の幸福に資するわけではないと彼らを主張する。高い価格のおかげで商品の供給が増えるというメリットがあるとしても、その価格に対応する視力が最も弱い人々への負担も考量されねばされねばならない。富裕層にとって、嵐のさなかに高騰したガソリン代やモーテル代を支払うことは不快なことかもしれない。だが、つましい暮らしを送る人々にとっては、こうした価格の真の困苦を強いるものだ。彼らは安全を求めて逃げるより、危険な所にとどまるかもしれない。社会全体の計量に際しては、不当な高値のために緊急時に基本的必要を満たせなくなるかもしれない人の痛みや苦しみを考量しなければならない。このように便乗値上げ禁止法支持者を論じる。 (p.18)

 

■私訳と本書の訳の比較

 いくつか表現の違いはあるが、私訳と本書の訳に大きなズレはないだろう。

 

 自然災害の中で、経済格差の影響は大きく出てくる。洪水被害に遭われた方の中で、自宅に留まる人々のニュースを見ることもある。「自宅に愛着があるから」という理由で留まる人々もいる一方、本書で「便乗値上げ禁止法支持者」が主張するように「経済的理由で自宅に留まらざるを得ない」人々もいることが想像に至らなかったことに気付いた。

 

 自然災害などの緊急事態が、倫理的葛藤や課題について考えるひとつの機会を与えてくれる。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】

 

 

【私訳#12】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第12回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

The standard case for unfettered markets rests on two claims one about the welfare, the other about freedom. First markets promote the welfare of society as a whole by providing incentives for people to work hard supplying the goods that other people want. (In common parlance, we often equate welfare with economic prosperity, though welfare is a broader concept that can include  noneconomic aspects or social well-being.) Second, markets respect individual freedom; rather than impose a certain value on goods and services, markets let people choose for themselves what value to place on the things they exchange.

 

■単語と文法事項の確認

・case:立場 

・unfettered:足かせがない 

・rest:置かれている

・as a whole:全体として 

・incentive:動機 

・parlance:言い方 

・equate:同等と見なす 

・prosperity:成功・繁栄 

・broad:広い 

・impose A on B:AをBに課す 

・place on:置く・かける 

 

■私訳

非制限的市場の標準的な立場は、一方で幸福についてもう一方で自由に基づいている。第1に、他人が欲しがる商品を供給するため人々に動機づけをもたらすことによって市場は社会全体に幸福を促進する。(幸福が非経済的側面や社会的福利を含むことができるより広い概念であるけれども、日常語では幸福を経済的成功と同じようにみなしがちである。)第2に、市場は個人を尊重する。すなわち、ある価値を商品やサービスに課すよりむしろ、取引する対象にどんな価値を置くのかを市場は人々に選択を委ねている。

 

■本書の訳

非制限的市場を擁護する標準的な議論は2つの主張に基づいている。1つは幸福に関する主張、もう1つは自由に関する主張だ。第一に、市場は社会全体の幸福を増大させる。他人が欲しがる品物を供給するべく努力する動機づけを人々にもたらすからだ(幸福とは社会的福利の非経済的面を含んだより広い概念であるが、日常語では、われれわれは降伏と経済的繁栄を同一視する傾向がある)。第二に市場は個人の自由を尊重する。商品やサービスに特定の価値を押しつけるのではなく、取引の対象にいくらの値をつけるかは各人の選択にまかせるのである。 (p.16)

 

■私訳と本書の訳の比較

 本書では「自由市場擁護論」が2つ登場する。

(1) 福利増大説:自由市場は社会全体の幸福を増すので支持する

(2) 自由尊重説:自由市場は個人の自由を尊重するので支持する

 

しかし、この2つの説から次の反論が登場する。

(1) 福利増大説に対して:「禁止法」は社会全体の福利を増大させないので支持しない

(2) 自由尊重説に対して:「禁止法」は個人の自由に介入するので支持しない

 

 以下、(1)と(2)への反論がそれぞれ提示される。【続く】

 

【次の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

【参考文献】

 

 

【私訳#11】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第11回である。

 

【前回の記事】

chine-mori.hatenablog.jp

 

 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

These questions are not only about how individuals should treat one another.they are also about what the law should be, and about how society should be organized. They are questions about justice. To answer them, we have to explore the meaning of justice. In fact, we've already begun to do so. If you look closely at the price-gouging debate, you'll notice that the argument for and against price-gouging laws revolves around three ideas :maximizing welfare, respecting freedom, and promoting virtue. Each of these idea points to different way of thinking about justice. 

 

■単語と文法事項の確認

one another:お互いに 

・closely:密に 

・revolves:(中心に)展開する 

・welfare:幸福 

 

■私訳

これらの問題は、どう個人がお互い単に扱われるかに関することではない。それらは法が何を扱うべきか、そしてどう社会が秩序づけられるかに関することでもある。それらは正義に関する問題である。それらに答えるため、われわれは正義の意味を探求しなければならない。事実、われわれはすでにそうするよう始まっている。もしも綿密に法外値上げの論争に注目するならば、法外値上げ法の賛成や反対の議論は3つの考えを中心に展開していることに気付くだろう。すなわち、幸福の最大化、自由の尊重そして美徳の促進である。これらの考えそれぞれが正義に関して異なる考えを示す。 

 

■本書の訳

これらの問題は、諸個人がお互いをどう扱うべきかに関わるだけではない。法律はいかにあるべきか、社会がどう秩序づけられるべきかに関わっている。つまり、これは「正義」にかかわる問題なのだ。これらの問題に答えるためには、正義の意味を探求しなければならない。実際われわれはすでにその探求を始めている。便乗値上げをめぐる論争をよく見てみれば、便乗値上げ禁止法の擁護論と反対論が3つの理念を中心に展開されていることがわかる。つまり、最大の幸福化、自由の尊重、美徳の促進である。これら3つの理念1つ1つに正義に関する異なった考え方が表れている。 (p.15)

 

■私訳と本書の訳の比較

 この段落から、サンデル自身の議論が展開され始めている。「ハリケーン・チャーリー」による「便乗値上げ法」の問題は、法律や社会のあり方にも関わった問題である。その際ポイントとなるのは、擁護論と反対論が①幸福の最大化②自由の尊重③美徳の促進を中心に展開されていくことである。【続く】

 

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【私訳#10】Justice:What's the right things to do ?- 『英語で読む哲学』より

 

 

はじめに

 入不二基義編『英語で読む哲学』をテキストに、マイケル・サンデル”Justice:What's the right things to do ?”(邦題『これからの「正義」の話をしよう』)を訳出する。今回は第10回である。

 

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 最初に原文を記し、次に単語の意味や文法解説と私訳を提示する。そして、本書の翻訳を該当箇所から引用する。その後、私訳と本書の訳を比較した私見を述べる。

 

[内容]

■原文

■単語と文法事項の確認

■私訳

■本書の訳

■私訳と本書の訳の比較

 

■原文

 The debate about price gouging that arose in the aftermath of Hurricane Charley raise hard question of morality and laws:Is it wrong for sellers of goods and services to take advantages of a natural disaster by charging whatever the market will bear? If so, what, if anything ,should the law do  about it? Should the state prohibit price gouging, even if doing so interfers with the freedom of buyers and sellers to make whatever deals they choose? 

 

■単語と文法事項の確認

・arise:生じる 

・in the aftermath of A:Aの直後に 

・bear:支える・持つ 

・prohibit:禁止する 

・interfers:干渉する 

・deals:取引 

 

■私訳

 ハリケーン・チャーリ-の直後に起こった法外値上げについての議論は法と道徳の難問を次のように提起する。市場が何を請求するによってしても自然災害を利用することは商品やサービスの売り手にとって不正なことであるのか。もしそうであれば、法に何かすべきことはあるのか。たとえ彼らの選択で取引する買い手と売り手の自由に介入することになっても、州は法外値上げを禁止すべきなのだろうか。 

 

■本書の訳

 ハリケーン・チャーリー通過後に巻き起った便乗値上げをめぐる論争は、道徳と法律に関する次のような難問を提起している。商品やサービスの売り手が市場価格を請求して自然災害を利用するのは不正なのだろうか。だとすれば、法律に何かすべきことがあるとして、何をすべきだろうか。たとえそれが自らの選択で取引する買い手と売り手の自由に介入することになっても、州は便乗値上げを禁止すべきなのだろうか。 (p.13)

 

■私訳と本書の訳の比較

 私訳と本書の訳に、大幅なズレはないだろう。今回の段落では、「自然災害」などを理由に「市場価格を請求」することは不正かという問題提起を行っている。その際、政府介入の有無や「便乗値上げを禁止」すべきかどうかについて言及している。【続く】

 

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