1.はじめに
今回の目的は、カントの著書である『判断力批判』の中に登場する「趣味判断」(Geschmacksurteil)を検討することである。というのも、「趣味判断」には、カント道徳哲学に関して「不完全義務」(unvollkommene Pflicht)を基礎づける可能性があるからである。
カントは『判断力批判』の中で、われわれの主観的な感覚が普遍的に妥当であるかどうかを模索した。このことが、カントの「不完全義務」を根拠づけられると考えられる。
今回は、「趣味判断」について概要を述べ、さらにその前提となる「共通感官」について探究する。最後に、今回の内容から得られた考察を踏まえ、今後の課題を考えていきたい。
「不完全義務」について、カントはあまり詳しく説明していないが、晩年の著書である『道徳形而上学』の中で、「不完全義務」こそ最も道徳的な義務であると主張している。今回の取り組みが、今後「不完全義務」を明確にするために役立つことを期待する。【続く】
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【参考文献】