ネコと倫理学

カント道徳哲学/動物倫理学/教育倫理学/ボランティアの倫理学/ネコと人間の倫理的関わりについて記事を書いています。

ピーター・シンガー

【第1回】21世紀の道徳|差別とは「不合理な区別」である【動物倫理学】

21世紀の道徳 作者:ベンジャミン・クリッツァー 晶文社 Amazon 「動物倫理学」を学習する上での第一歩は、「種差別」(speciesism)という概念を理解することにある。「種差別」という言葉は心理学者リチャード・ライダーが初めて使用し、ピーター・シンガーが…

【動物倫理学】人間以外の動物は単なる「手段」ではない【カント道徳哲学】

道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon カントの文脈に即すと、人間以外の動物は単なる「手段」である。人間以外の動物は、われわれと同等な「道徳的地位」を持つとは言い難い。しかし、事態はそう単純ではない。 今回、動…

【動物倫理学】道徳と、人間と動物のきずな|「苦痛」以外の動物の倫理的考慮の基準

コンパニオン・アニマル―人と動物のきずなを求めて 誠信書房 Amazon ピーター・シンガーによれば、どんな生きものであろうと、平等の原則がその苦しみが他の生きものと同様の苦しみと同等に考慮されなければならない。 【参考:動物の解放】 動物の解放 改訂…

【第4回】人間以外の動物への倫理的配慮の基準は「苦痛」だけでは不十分である|まとめ【動物倫理学】

【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 4.まとめ 以上、今回はピーター・シンガーとベンサムの「功利主義」を中心に、人間以外の動物への倫理的配慮の基準となる「苦痛」についての主張を整理した。 その後、久保田さゆりの主張を参考にしながら、「苦痛」…

【第3回】人間以外の動物への倫理的配慮の基準は「苦痛」だけでは不十分である|久保田さゆりの議論【動物倫理学】

【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 3.動物の「豊かな内面」への理解ー久保田さゆりの議論 久保田さゆりもピーター・シンガーの考え方にも、基本的には賛成である。その理由として、久保田は次の2点を挙げている。 第1に、痛みはその倫理的な重要性の否…

【第2回】人間以外の動物への倫理的配慮の基準は「苦痛」だけでは不十分である|シンガーの議論【動物倫理学】

【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 2.「苦痛」という感覚が唯一の判断基準ーピーター・シンガーの議論 シンガーは、その著書『動物の解放』で次のように述べる。 もしある当事者が苦しむならば、その苦しみを考慮に入れることを拒否することは、道徳的に正…

【第1回】人間以外の動物への倫理的配慮の基準は「苦痛」だけでは不十分である|動物への倫理的配慮基準の新たな視点【動物倫理学】

動物の解放 改訂版 作者:ピーター シンガー 人文書院 Amazon 1.人間以外の動物への倫理的配慮基準の新たな視点 沖縄県では、「一生うちの子プロジェクト」という取り組みを実施している。この取り組みの目標は、県内での捨て犬や捨て猫をゼロにすることであ…