倫理学
6.『啓蒙とは何か』での理性の公的な利用(その2) 【参考:過去記事】 chine-mori.hatenablog.jp 【前回の続き】 このカントの主張から平成30年度告示『高等学校学習指導要領』に記載されている「主体的・対話的で深い学びの実現」(文部科学省,2018,19)が、…
5.『啓蒙とは何か』での理性の公的な利用(その1) 『啓蒙とは何か』冒頭で、カントは「啓蒙」について次のように述べる。 【参考:啓蒙とは何か】 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) 作者:カント 発売日: 2006/09/07 メディア: 文庫…
4. 『実践理性批判』での道徳的教育方法(その2) 【参考:過去記事】 chine-mori.hatenablog.jp 【続き】 ただし、カントの道徳的教育方法は、ソクラテスの「問答法」を意識しているように思われる。『人倫の形而上学』によれば、教師は生徒の思想の産婆であ…
3. 『実践理性批判』での道徳的教育方法(その1) 【参考:実践理性批判】 実践理性批判 [カント三批判書] 作者:イマヌエル カント 発売日: 2004/04/09 メディア: 単行本 『実践理性批判』第2部「純粋実践理性批判の方法論」で、未発達な子どもの心を道徳的善に…
2. 『教育学』での基本的考え方 【参考: 教育学】 人間学・教育学 (西洋の教育思想 5) 作者:イマヌエル カント メディア: 単行本 始めに、カントの教育論の基本的考え方について簡単に確認する。カントは『教育学』冒頭で次のように述べる。 人間は教育され…
1.はじめに 平成30年度告示『高等学校学習指導要領解説 総則編』にもあるように、わが国は挑戦の時代を迎えている。 【参考: 『高等学校学習指導要領解説 総則編』(平成30年度告示)】 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総則編 ―平成30年7月 (高等学校…
世界の名著 74 ハイデガー (中公バックス) 作者:ハイデガー メディア: 単行本 ハイデガーは「das Man」という概念によって、近代的な「自我」としての「私」を否定したとされる。 川原栄峰によれば、ハイデガーの「das Man」という概念は、20世紀の人々に大…
【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 4.まとめ 以上、今回はピーター・シンガーとベンサムの「功利主義」を中心に、人間以外の動物への倫理的配慮の基準となる「苦痛」についての主張を整理した。 その後、久保田さゆりの主張を参考にしながら、「苦痛」…
【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 3.動物の「豊かな内面」への理解ー久保田さゆりの議論 久保田さゆりもピーター・シンガーの考え方にも、基本的には賛成である。その理由として、久保田は次の2点を挙げている。 第1に、痛みはその倫理的な重要性の否…
【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 2.「苦痛」という感覚が唯一の判断基準ーピーター・シンガーの議論 シンガーは、その著書『動物の解放』で次のように述べる。 もしある当事者が苦しむならば、その苦しみを考慮に入れることを拒否することは、道徳的に正…
動物の解放 改訂版 作者:ピーター シンガー 人文書院 Amazon 1.人間以外の動物への倫理的配慮基準の新たな視点 沖縄県では、「一生うちの子プロジェクト」という取り組みを実施している。この取り組みの目標は、県内での捨て犬や捨て猫をゼロにすることであ…
動物からの倫理学入門 作者:伊勢田 哲治 名古屋大学出版会 Amazon 「前回の記事で、オランダの「クリスマス」と沖縄県の「闘鶏」は、それぞれが「伝統」や「文化」を前提にしていることを述べた。 【参考:過去記事】 chine-mori.hatenablog.jp 倫理学的観点…
写真出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 前回の記事で、「伝統」や「文化」を前提に人間や人間以外の動物の権利を傷つけることは容認できるだろうかという問題提起を行った。この問題に関して、オランダの「クリスマス」について取り上げ…
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 人間であっても、人間以外の動物であっても、「伝統」や「文化」という固有の価値観に基づいて、人間やその他の動物を差別的に扱うケースがある。このような行為によって、地域や特定の集団の「文化的…
道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon カントの「不完全義務」という考え方は、応用倫理学の中で取り上げられる。中でもボランティアや介護などについて倫理学的に議論する場合、「不完全義務」という考え方は引き合いに出…
2019年7月6日に、TNR活動に参加。その模様を、写真と共に紹介する。 とある県の、とある島。古い集落が、今も残るのどかな田園地帯。(遺棄する恐れがあるので場所は伏せる) 早く集合場所に着いてしまったので、しばらく周囲を散策。 ヤギを発見。夕方近く、…
カント全集〈11〉人倫の形而上学 作者:カント 岩波書店 Amazon 4.終わりに 今回は、カントの道徳哲学の書である『基礎づけ』や『人倫の形而上学』と、『判断力批判』で語られる他者について検討した。 その結果、『基礎づけ』や『人倫の形而上学』では、道徳…
判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 3.拡張された考え方の格率 『基礎づけ』や『人倫の形而上学』で、カントは他者よりも、道徳的主体である自己を問題にしていた、ということが分かった。 一方、『判断力批判』で、他者との関係性…
道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 2.虚言について 『基礎づけ』の中でカントは「義務」(Pflicht)を4種類に分類する。それは「自分自身に対する完全義務」、「他者に対する完全義務」、「自分自身に対する不完全義務」…
判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 1.はじめに カントは、われわれの理性から普遍的な道徳法則を導き出す。この普遍的な道徳法則が、「定言命法」(Imperative Gesetz)である。カントの全体的な説明の仕方から考えると、一見、カン…
判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 4.結びにかえて 以上、「趣味判断」について検討してきたが、『判断力批判』に即して「不完全義務」についても考察する必要がある。また、今後は「趣味判断」と道徳との関わりについても検討が…
判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 3.「共通感官」について 「趣味判断」には主観的な判断が必要であるため、カントは「共通感覚」という概念を導入した。『判断力批判』の文脈から考えると、「共通感覚」とは普遍的に有効な判断を…
判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 2.「趣味判断」について 「趣味判断」とは、あるものを「美しい」と判定する判断のことである。この判断力は、特に美しいものの判定の能力として「美感的判断」(ästhetisches Urteil)とも呼ばれ…
判断力批判 上 新装版 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 1.はじめに 今回の目的は、カントの著書である『判断力批判』の中に登場する「趣味判断」(Geschmacksurteil)を検討することである。というのも、「趣味判断」には、カント道徳哲学に関して「不完…
道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 4.他人に対する不完全義務ー親切の例ー 最後に、「他人に対する不完全義務」に反する「格率」について検討する。 「われわれが安楽に生活している時、他人が困窮しているならば、その困…
道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 4.自分自身に対する不完全義務ー自己実現の例ー 第3に、「自分自身に対する不完全義務」に反する「格率」について検討する。 カントは、「安…
道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 3.他人に対する完全義務ー虚言の例ー 第2に、「他人に対する完全義務」に反する「格率」について検討する。 金に困窮した人が金を返すことが…
道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 【前回の記事】 chine-mori.hatenablog.jp 2.自分自身に対する完全義務ー自殺の例ー 第1に、「自分自身に対する完全義務」に反する「格率」について検討する。 カントは、「われわれの…
道徳形而上学の基礎づけ [新装版] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 1.はじめに 『道徳形而上学の基礎づけ』(以下『基礎づけ』と略記)の中で、カントは、「義務」を2種類に分類する。それら2種類の「義務」とは、すなわち「完全義務」と「不完全義務…
実践理性批判 [カント三批判書] 作者:イマヌエル カント 以文社 Amazon 2.「意志」について 「定言命法」の根本法式で、カントはわれわれの格率が普遍的法則となる条件として、その格率が普遍的法則として「考えることができ」そして、「意欲することができ…